肺がんの骨転移と腰痛 痛みの症状、検査、治療法

腰痛の原因となるものはたくさんありますが、その中でも命に関わるものがあります。

それは「がん」です。

腰が痛くなったとき、まず最初にがんを疑う人はいません。普通は、単なる疲労による痛みとかぎっくり腰ヘルニアで、高齢者の場合は圧迫骨折を疑うぐらいです。

誰も腰の痛みが自分の命を奪う物とは考えません。

しかし、腰痛の原因で最悪を想定した場合、行き着くところはがんになります。

この腰痛が命に関わるかもしれない。そういう最悪の想定ができるだけで、もしかしたら自分の命を救うことになるかもしれません。

肺がんの骨転移

肺がんでの骨転移は、肝臓、肺の次に起こりやすいです。
転移が起こりやすい骨は、腰椎や胸椎などの脊椎が最も転移しやすく、続いて骨盤、大腿骨となります。
肺がんは遠隔転移しやすいがんで、膝より下や、肘よりも先の末梢の骨にも転移病変を作ります。体幹部分の病変ももちろん多いのですが、末梢の骨にも骨転移が起こりうるのが肺がんの骨転移の特徴です。

最初に述べたように、どんな医者でもまず最初に腰の痛みで骨転移を最も疑う医者はいません。(既往歴が分からない、初診の患者の場合)

他の腰痛と同じで、X線検査や明らかな痺れ、麻痺があればMRI検査が最初に行われます。

最初の時点で、MRI検査を行っていれば骨転移を早い段階で疑うことができます。X線検査では、残念ながら腰椎が変形しているのは分かりますが、それが単純な圧迫骨折によるものなのか骨転移による変形なのかは判別できません。

もし採血などを行わずX線検査のみの場合、すべり症や変形性脊椎症として診断されたり、転移していても腰椎の形がきれいに保たれている場合なら、湿布薬を処方され様子見になるかもしれません。そうなると骨転移の発見はどんどん遅れていきます。

骨転移している腰椎をMRIで撮ると、通常の圧迫骨折とは明らかに違う画像になります。
通常の圧迫骨折は、潰れている部分と正常な部分がはっきりとしていますが、骨転移の場合、まだらで境界がはっきりしていないです。
もしくは、圧迫骨折の場合椎体の前方部分から潰れますが、骨転移の場合前方部分は正常なのに後方部分が潰れたような画像になったりして、経験のある医師なら簡単に判別がつきます。

中には典型的ではなく判別が難しいものもあります。そのときは造影MRI検査を行います。

肺がんの骨転移の症状

骨転移すると様々な症状が体に現れます。痛みや骨折、痺れなどです。

痛みは骨転移の部位に応じて,腰椎に転移すれば腰痛,胸椎なら背中の痛み,大腿骨なら股関節や太ももの痛み,骨盤なら腰骨のあたりの痛み,上腕骨なら腕の痛み,などが現れます。このような痛みは骨転移以外の原因でも現れますが,数日にわたって痛みが消えないような場合には,骨転移の可能性も考えなくてはいけません。絶対とは言えませんが、安静にしていても痛みが引かない、変わらない場合は癌による痛みの可能性があります。

骨転移するとその部分の骨がもろくなります。なので骨折が起こりやすくなります。特に体重のかかる部分の骨が弱くなり,骨折に至ることが多いです。通常,かなり激しい痛みを伴います。腰椎・胸椎では圧迫骨折を起こします。大腿骨が骨折すると立っていることもできなくなります。

上記の良性腫瘍でも書きましたが、脊椎転移によって脊髄が圧迫され,手足のしびれや麻痺が現れることがあります。この場合は急いで治療をしないと,しびれや麻痺が永久に回復しない場合があります。

転移した骨からカルシウムが溶け出す結果,血液中のカルシウム濃度が高くなることがあります。これを高カルシウム血症といいます。カルシウム濃度が高くなると,のどが渇く,胃のあたりがむかむかする,尿の量が多い,お腹(なか)が張る,便秘気味になる,なんとなくぼーっとする,などの症状が現れます。治療が遅れると脱水症状が強くなり,腎臓の働きが落ちてしまうので,早めの治療が必要です。

このような症状にあてはまる場合、すぐに病院へ行ってください。

肺がんの骨転移の検査

原発の癌が特定され、症状的に骨転移が疑われたとき骨シンチグラフィーやPET-CTをします。

どちらも核医学検査と呼ばれるもので、癌細胞に取り込まれやすい放射性物質を投与して検査を行います。

骨シンチグラフィー

骨はその形を維持しながら、常に新しい骨組織に置き換わっています(破壊と再生を繰り返しています)。骨に病気が発生すると、この破壊と再生のバランスが崩れ、骨を作りすぎてしまったり(骨造成、骨硬化)、作らなかったり(骨吸収、溶骨)といった現象が起こります。骨シンチグラフィー検査はこの骨造成を反映する検査であり、がんが骨へ転移しているかどうかを検出するのに頻繁に利用されます。がんが骨に転移しているかどうかは、がんの治療を進めていくうえで重要な情報となります。それ以外にも骨折や骨髄炎、関節炎の診断に利用されることもあります。
検査は、骨シンチグラフィーの薬の注射を行い、薬が全身に浸透する注射後3時間ころから約30分程度の撮影を行います。

PET-CT

骨シンチグラフィーは骨転移を調べる場合がほとんどですが、PET-CTは、骨転移以外にも全身に転移したがんを調べることができます。

がん細胞は、勝手に仲間を増やして大きくなり、転移などを起こして広がります。その活動のエネルギーの元はブドウ糖で、癌細胞は正常細胞の何倍もの量のブドウ糖を取り込むため、18F-FDGを注射すると、この薬も癌の病巣に集まります。薬が集まったところからは放射線が多く放出されるので、それを捕らえて画像化することにより、がんの病巣を見つけ出すことができます。

ただ、全てのがんが発見できるというわけではなく、脳、扁桃腺、乳腺、肝臓、腸管には自然集積があります。また尿として排泄されるので、腎から膀胱にかけても集積が見られます。これらの部位を調べるのには不向きです。

肺がんの骨転移の治療

骨転移の治療には大きく「手術」「薬物療法」「放射線治療」があります。

手術

骨転移の手術の場合、癌の転移が原因の骨折に対して、生活の質を保つための手術を行う場合が多いです。圧迫骨折や人工関節の手術などをしてなるべく患者さんが普段の生活を送れるようにします。脊髄の麻痺が切迫している場合には除圧術という、神経の圧迫を解除する手術を行うこともあります。

がんの治療として骨に転移した病巣を取る手術を行うことは多くはありません。しかし、病巣が限局していて取りきれる範囲である場合など、特定の癌種の特定の状況では手術を行うこともあります。

薬物療法

一部の病態では癌に対する薬物治療がよく効果を示すので放射線治療よりも薬物による全身療法が優先されることがあります。

薬剤が効きやすい遺伝子変異をもつ肺がん、リンパ腫などでも、骨転移による症状が少なければ、まずそれぞれの腫瘍に対する治療を行うことがあります。

また鎮痛剤を用いて、痛みをコントロールすることも重要です。

放射線治療

放射線治療は様々ながんの治療で用いられますが、骨転移に使われる場合、完治ではなく、痛みを軽減させる目的で使用されます。

手術による治療と比較すると負担は小さい放射線治療ですが、注意する点があります。それは、一ヵ所の病変部位に対する治療回数は、基本的には一回という点です。これは照射される部位によって、耐容線量という、正常組織に障害を起こさない線量が決まっているからです。なのでその線量を超えないように放射線治療は行われます。

骨転移が生じても長くがんと共に歩む患者さんが増えてくると、一度放射線治療を行っても、数年後に再び増大してくるケースがみられるようになってきています。もし背骨の骨転移であれば、二回目の治療でさらに10~20回照射すると、脊髄の耐容線量を越えてしまい、合併症の危険性が高まってしまいます。

放射線治療は、タイミングが早過ぎれば、将来、再増大の懸念を残すことになり、タイミングが遅れると、骨折や麻痺の危険性が高まることになるのです。

実際の診療の場面で目安となるのは、痛みなどの症状の出現する時期です。画像検査で骨転移がかなり目立つようになっても、全く無症状の場合には放射線治療は見送られることが多いと思います。一概には言えないのですが、症状が出てきた頃を放射線治療の開始時期と判断するのが一般的です。

肺がんの骨転移と腰痛まとめ

肺がんは、比較的検診で見つかる可能性が高いがんです。

肺がんは、タバコを吸っている人やじん肺になる可能性がある人はしっかり検診を受けていますが、タバコを吸っていなくてもなる可能性は十分あります。
肺がんは、検診以外でも風邪をひいたときに撮った胸部レントゲンで見つかることもあります。

検査をせずに病気が見つかることはありません。肉体的、精神的、金銭的にも負担を伴う場合もありますが、何か気になることがあったら必ず検査を受けてください。

腰痛は誰しもが経験する非常ポピュラーなものです。
でもその痛みの原因には、自然に治るものから手術が必要なもの、そして命に関わるもの様々です。

命に関わる腰痛があると頭の片隅にでも留めていただいたら幸いです。

※本記事は情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、腰痛改善運営会社及び監修医などの専門家は責任を負いません。

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