新型コロナ禍のメンタルヘルス危機とピラティスの効果

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により、世界中の人がメンタルヘルスの危機にさらされています。
世界保健機関(WHO)の報告書では、新型コロナ感染拡大国において多くの人がメンタルヘルスの危機に直面し、うつ病などが増えていることが示されました。2020年4月に発表されたエチオピアの調査によると「うつ」の症状を示す人の割合は、COVID-19の流行前に比べ3倍に増加したとのこと。世界中の人が今、精神的な苦痛を発症する危機にさらされているのです。

1. 世界中で爆発するメンタルケアニーズ

1.世界中で爆発するメンタルケアニーズ

パンデミック発生地である中国では、2020年1月の時点でメンタルケアのニーズが急激に高まっていることを政府関係者が報告して以来、大学やNGOが、精神的に追い込まれた市民の相談に乗るホットラインを設立しました。
アメリカの調査でも、新型コロナに対する不安が自分のメンタルヘルスに悪影響を与えていると思うと答えた人は45%と約半数であると報告されています。
インドでは、新型コロナの拡大による自殺者の増加が心配され、フランス、ブラジル、エチオピア、イギリスでも多くの国の専門家が、メンタルケアを必要とする人が急増する恐れがあり、その対象数は、既存のシステムで対応できるレベルをはるかに超えるかもしれないと、警鐘を鳴らしています。
こういった世界的な状況を受け、WHOのテドロス・アダノム事務局長も「感情面のウェルビーイングを真剣に考えなければ、社会と経済は長期にわたり代償を払うことになるだろう」 と述べています。

2. 「コロナは同時多発テロに似ている」

2.「コロナは同時多発テロに似ている」

災害が人間の心理に与える影響を研究してきたカリフォルニア大学のロクサーヌ・コーエン・シルバー教授(心理科学)は、「新型コロナ危機は、あらゆる人の心理に影響を与えているという点で、米同時多発テロに似ている」と述べました。家族や仲間の喪失、仕事やお金に対する不安、入学式や卒業式、結婚式の延期・・・。しかしテロとは異なり、進行が遅く終わりが見えないことから人々はより大きなストレスに晒されていると考えられます。
大きな災害に遭遇したとき、メンタルヘルスに問題が出現することは数多くの調査により数値で示されていおり、ハーバード大学医科大学院のリチャード・フランク教授によると、パンデミック前と比べ、人々のアルコール摂取量が増えているほか、オピオイド(鎮痛剤)の使用と、過剰摂取による死者も増えているそうです。

3. 「世間からは医療者差別」医療従事者の苦悩

3. 「世間からは医療者差別」医療従事者の苦悩

コロナ治療の最前線で活躍する医療従事者も例外ではありません。

中国によると、うつ病、不安、不眠症を訴える医療従事者は、それぞれ50%、45%、34%と高い確率を示しています。また、日本医療労働組合連合会が2020年4月までに実施したアンケート調査では、回答した医療従事者の約19%が、新型コロナに関連する病院職員への差別やハラスメントがあると回答しました。
zen placeが医療従事者に向け実施したアンケート調査の中でも、コロナ禍では「世間からは医療者差別を感じていた」というような声が寄せられ、患者の死や感染の不安など過酷な状況に対するストレスにプラスし、差別やハラスメントによるストレスにより心身に不調を感じていることがわかります。また、危機的状況を乗り越えようとしてる今、「燃え尽き症候群」に陥ることも心配がされており、新型コロナウイルスの医療現場においてもメンタルヘルスのケアが重要視されています。

4. ストレスホルモン「コルチゾール」

4. ストレスホルモン「コルチゾール」

乾敏郎氏の著書『感情とはそもそも何なのかー現代科学で読み解く感情の仕組みと生涯ー』では、「ストレスがかかると、ストレスホルモンであるコルチゾールが分泌されるが、負のフィードバック機構によって、しばらくするとコルチゾールの分泌が抑制される。しかし、うつ病の場合この負のフィードバック系がうまく働かず、コルチゾールの分泌が抑制されない。これによって、より多くの代謝エネルギーを予測し、ホメオスタシスが維持できず、炎症誘発状態に陥ると考えられる。」と述べられています。
コルチゾールとは、副腎皮質から分泌されるホルモンの一種で、心身がストレスを受けると、急激に分泌が増えることから、「ストレスホルモン」とも呼ばれています。ストレスから身を守ろうとするとき、コルチゾールの分泌が一時的に増加します。こらが一時的に増えることには問題がありませんが、長期的なストレスにさらされコルチゾールの分泌が増加した状態が続くと、脳の「海馬」という部分を委縮させるなど、脳に影響を及ぼすことがあるのです。また、コルチゾールは、全身の色々な臓器に作用し、全身の代謝やアレルギー反応の抑制などに関連しているため、過剰なストレスがかかると、免疫系・中枢神経系・代謝系など、身体のさまざまな機能に影響を及ぼします。

このように、ストレスは身体の様々な機能を低下させてしまいます。心身を健康に保つには、コルチゾールの分泌が正常であることが不可欠なのです。

5. コルチゾール分泌の正常化にはピラティス

5. コルチゾール分泌の正常化にはピラティス

コルチゾールの分泌を正常に働かせるためには、下半身の筋肉を使う、適度な負荷の運動が効果的だとされています。適切な酸素やエネルギーを必要とする低強度の運動では、コルチゾール分泌が進み、心拍数が増え血圧が上昇します。これを日常的に繰り返すことで、身体は適度なストレスと、運動終了による分泌コントロールに慣れていきます。そうしていくと、実際に仕事や人間関係でストレスがかかったときも、コルチゾールを適切に分泌することができ、身体のバランスが維持されるという仕組みになっているのです。

また、ピラティスは「動く瞑想」とも言われており、呼吸や体の細部に意識を向け集中を高めていくことで瞑想状態を作り出し、心と身体をコントロールしていくエクササイズです。深い呼吸が脳に酸素を送り、脳と身体を繋ぐ神経を刺激することで頭と身体を活性化させ、身体の機能が正常に働くためのサポートをします。ストレスの低減、集中力の向上、免疫機能の向上、睡眠の質の向上など、様々な効果が期待できる唯一のエクササイズです。

6. withコロナ時代の生き方を

コロナ問題は長期化することが予想されます。 人口のうち一定割合の人が感染して免疫を持つ、「集団免疫」がつくことによって感染拡大が封じ込められていく、という考えがある一方で、回復患者への新たな経時的調査によると、新型コロナに対する免疫は短期間しか持続しない可能性があることも報告されています。

withコロナ時代の生き方を、本気で考える時が来ました。今だからこそ、zen placeでピラティスのあるライフスタイルを始めてみませんか?

参考・出典:
NEWS PICKS 編集部『【深刻】コロナが生み出す「メンタルヘルス危機」』
乾 敏郎著『感情とはそもそも何なのかー現代科学で読み解く感情のしくみと障害ー』ミネルヴァ書房・ 2018年