しあわせのカタチ

こんな本屋に、行きたかった

こんな本屋に、行きたかった
03|Cat’s Meow Books「保護猫と本屋が助け合い、人の縁を繋ぐ場所であり続けられたら」

ーー「“猫”の文字があれば、ここでは猫本」。元保護猫の“猫店員”と人が助け合う街の本屋に|独立系書店「Cat's Meow Books」店主・安村正也さんの1日【こんな本屋に、行きたかった vol.3】

東急世田谷線・西太子堂駅から徒歩2分。「Cat's Meow Books」は、“どこかに猫が出てくる本”を集めた独立系書店です。店内では“猫店員”として迎え入れた元保護猫が気ままに過ごし、書棚には漫画や絵本、写真、小説、ノンフィクションなど、ジャンル、新刊古本を問わず約3,500冊が並びます。

「猫がきっかけとなって、本を読む人が増えたらいいなと思って」。店主・安村正也さんは、現代社会で立場の危うい保護猫、そして本屋さんが助け合う関係性を、この場所から築いていきたいと話します。

「定年まで働く、そのイメージが湧かなくて」。
“世界猫の日”に合わせてオープンした「Cat's Meow Books」

安村さんは外資系マーケティング企業に勤めていましたが、定年まで会社員を続けるイメージが湧かなかったそうです。同時に好きなものに囲まれたお店を開きたいと考えるようになりました。

「その想いを叶えられる形が、猫のいる本屋でした。オープン当初は街の本屋が少しずつ減り、また、“保護猫”という言葉も、今ほど一般的ではなかった時代。立場の危うい本屋と保護猫が助け合うことに重きを置きました」

そして、会社員として勤めながらクラウドファンディングでお店の支援者を募り、2017年、世界猫の日(8月8日)にオープンしました。それから9年がたった今も、かつての支援者の名札が店内のあちこちに飾られています。

「“猫”の文字が出てくれば、うちの本屋では猫本です」

Cat’s Meow Booksでは、猫の写真集や絵本など可愛い猫が見られるものだけが猫本というわけではありません。小説やエッセイ、実用書、ノンフィクションなど、一見すると“猫本”には見えない本も並んでいます。

「うちの本屋では“猫”の言葉が出てくれば、猫本なんです。オープン当初は夫婦で書店を巡り、実際にページをめくって猫が登場するか確認していて。そうすると、次第に、“この作家さんの作品には猫が出てきそう”という感覚が徐々についてくるんですよ」

次第に出版社やお客さんからの“猫本”紹介も増え、今では新刊と古本を合わせて約3,500冊が並ぶほどになりました。新刊が約7割、古本は3割ほどの比率だそうです。

可愛いだけじゃなくて、“猫店員”を通して知ってほしいこと

「ここで過ごす“猫店員”は全て元保護猫なのですが、オープン当初はりんご猫(ネコエイズウイルスに感染した猫)の保護猫も迎え入れていました。里親が見つかりにくい子も、元気に暮らせることを知ってもらいたかったんです」

病気などを患った猫への偏見を少しでも無くしたい、またペットショップではなく保護猫活動団体から迎え入れるという選択肢があることを知ってもらいたい。安村さんの想いが込もったお店を訪れたお客さんの中には、本、そして猫との出会いで人生が変わった人たちも少なくありません。

「猫が人との縁を繋いでくれる感覚があるんです。実際にここで手にした本がきっかけで、その作家のファンになったというお話や、犬派のお客さんが通ううちに保護猫に興味を持って迎えたというお話もあって。「Cat’s Meow Books」が人生の転期となった大切な場所の一つとして数えられていたとしたら、嬉しいです」

「良い本」は人それぞれ。だからこそ、自分の好みだけで棚を作らない

「“良い本だけ置いてます”っていう言い方、あまり好きじゃなくて」

面白いと感じる本も、心に残る本も、人によって違う。自分には合わなかった本でも、誰かにとっては大切な一冊になることがあるといいます。だからこそ、心に留めていること。それは自分の好みだけで棚をつくらないようにすることです。

「猫っていう切り口があることで、自分なら読まないかもしれない本も置けるんですよね。猫をきっかけに、本と出会う。その入口をつくることを、この店では大切にしています」

「生きものとの別れが、地に足着いた言葉で綴られている」。“イモムシ画家”のエッセイ「飼い主もも」

安村さんが店内に並ぶ本の中から、最近読んで印象に残っている本として挙げたのは『飼い主もも』。芋虫を描く画家として活動する著者が、幼少期から一緒に過ごしてきた動植物たちとの記憶を綴ったエッセイ集で、なぜイモムシだけを描く画家になったのかも綴られています。

「本の中には、猫や犬、鳥などの絵も多く描かれており、童話のような文体で物語が進む一方、生き物と暮らすなかで避けられない「別れ」についても、目を逸らさずしっかりと書かれています。生き物の生と死を、地に足着いた言葉で綴られていて、僕にとっては腰が砕けるほどの衝撃を受けた良い本でした」

朝起きて「今日はこれをやってみよう」と思える心持ちでいられることが幸せ

最後に安村さんにとっての幸せをお聞きしました。

「朝起きた時に、前向きな気持ちでいられる状態ですかね。売上が伸びない日もあれば、猫の体調が心配な日もある。それでも、「今日はこれをやってみよう」「こうしたら良くなるかもしれない」と考えられる状態が、自分にとっての幸せですかね。何かをやろうと思える状態って、本当はとても幸せなのではないでしょうか」

安村正也さん/「Cat’s Meow Books」店主

安村正也さん/「Cat’s Meow Books」店主

外資系マーケティングリサーチ会社に勤めながら、2017年8月8日に「Cat’s Meow Books」をオープン。店内の“猫店員”と暮らしながら、「どこかに猫が出てくる本」をテーマに、新刊・古書を扱う。売上の10%を保護猫活動団体へ寄付している。猫と本屋が助け合う関係性・循環を大切にしている。

Cat’s Meow Books

Cat’s Meow Books

住所:〒154-0023 東京都世田谷区若林1-6-15
営業時間:公式Xよりご確認ください(キャッツミャウブックス®︎ https://x.com/CatsMeowBooks)

Instagram: catsmeowbooksjp/

画像/船場拓真
記事制作/株式会社ZEN PLACE

※イベントや営業時間などの最新情報は公式Xをご確認ください
※本記事は2026年4月に行った取材をもとに制作されたものです

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