映画ライター・よしひろまさみちの、ほぼ週刊映画コラム「後は、ご自由に」
#16『トスカーナの休日』|映画ライター・よしひろまさみちの、ほぼ週刊映画コラム「後は、ご自由に」

映画ライターで日本アカデミー賞会員のよしひろまさみちさんが、毎月のテーマに合わせて作品を紹介する、ほぼ週刊の映画コラム「後は、ご自由に」。
7月のテーマは、目的を決めず、ただただ夏に出掛けたくなる映画。第16回は、世界有数の美しい田舎町として名高い、イタリア・トスカーナへの旅行を機に、新たな人生を手繰り寄せようと奮闘する1人の女性を描いた映画『トスカーナの休日』をご紹介。
10日間のイタリア(傷心)旅行で手にしたのは、古びた一軒家…と新たな人生
あまりにも暑い夏。どこにも出かけたくない……と思うのも仕方ないですし、無理して出かけないで下さい(ガチで倒れます)。がしかし、せっかくの夏ですもの。どこかに行った気分になる映画を観て思いを馳せる、または映画をきっかけに海外のロケ地(現地のお天気情報はきちんと調べてくださいね)へ飛び出すのもいいのでは? そこでご紹介したいのが『トスカーナの休日』です。まさに夏向き、まばゆい陽光とひまわりの美しい情景が映し出されるロマンティック・コメディです。
サンフランシスコで作家として活躍するフランシスは、夫が浮気したことをきっかけに離婚し、家まで失ってしまいます。心身ともにボロボロの彼女をみた親友は、彼女に10日間のイタリア旅行をプレゼント。気乗りしないままツアーに参加した彼女ですが、トスカーナの古都コルトーナでみつけた「ブラマソーレ(太陽に焦がれる)」という一軒家に一目惚れして衝動買い。そのまま移住を決めます。言葉が通じず、文化も生活習慣も違う異国の地で、荒れた家の修復を始めた彼女に待っている新天地の生活は!? という作品。
なんといってもトスカーナの美しい情景にはうっとり。今年の現地は欧州を襲う熱波の影響で日本と同等の酷暑だそうですが、とはいえ日本で暮らす私たちには「熱波でもこの風景とワインと食事があれば!」と思わせるだけの玄人リゾート感。傷心のフランシスが、創作意欲と新しい人生の1ページを開くきっかけにしたブラマソーレとイタリアのライフスタイルは、観ているだけでも旅情を感じさせてくれると思います。
そしてなにより、この作品のキモはフランシスの再生物語。中年の危機ともいえる時期に泥沼の離婚ですから、若い頃のトラブルとは違って簡単には復活できません。そこに、心の友からの後押しで日常を離れる旅のプレゼント。そして、異国の地で始める新生活と新しい出会いと恋。大胆に環境を変えることによって、癒しではなく、前向きに新しい一歩を踏み出す勇気が湧いてくることを描いているのが、本作最大の見せ場です。
慣れた土地ではなく、どこか知らないところで切り開く人生。現実的ではない、と感じる人も多いでしょう。が、映画ですもの。せめて鑑賞中はフランシスになった気分に浸ってみてくださいね。



