07|本屋ひとりごこち「さまざまな人に、「この場所に居てもいい」と思ってもらえるように」
喫茶ランドリー
人も、動物も、空間も隔てない。パニック症で2年間はたらけなかった、ななせさんがまちの暮らしの交差点「喫茶ランドリー」で、手にした日々

ーー「パニック症で、2年間はたらけなかったけど…」。ななせさんがまちの暮らしの交差点「喫茶ランドリー」で、手にした日々
「どんなひとにも自由なくつろぎ」。「喫茶ランドリー」はそのコンセプト通り、訪れる人が思い思いに過ごせる居場所になっています。喫茶店としてはもちろん、店内奥には洗濯機・乾燥機を備え、アイロンやミシンが使える「まちの家事室」も。
ここではたらくななせさんは、1冊の本をきっかけに「喫茶ランドリー」に加わりました。
「ルールではなく、それぞれが好きなこと、得意なことをお店に還元していけばいい。そんな空気のおかげで、自分らしさを少しずつ取り戻せています」
喫茶ランドリーで過ごす日々、はたらき始めてからの暮らし、今感じる幸せについて、お聞きしました。

お店に通い、思いが募り、口から出た一言「はたらく人、募集してませんか?」
「もともと、私設公民館など地域に根ざした場所づくりへの興味はありました。ある日、喫茶ランドリーをつくった田中元子さんの書籍を読み、「こんな素敵な場所があるんだ」と感動して」
以来、何度かお店に足を運ぶようになり、「素敵な場所」と感じる気持ちは「ここで、はたらきたい」という意思に変わっていったそうです。

そして、「はたらく人、募集してませんか?」という一言が、ななせさんがここではたらく最初の一歩となりました。
「募集はしていなかったそうなのですが、オーナーの元子さんに「来ちゃいなよ」と言っていただいて。およそ1年前ぐらいから、はたらき始めました」

マニュアルは、なし。みんなで過ごす日々が「喫茶ランドリー」を形作っていく
この場所が、他のカフェとちょっと違うのは、洗濯やミシン掛けなどができるといった設備の面だけではなく、はたらく人と訪れる人の関係性が良い意味で曖昧であるということ。
「はたらく人も、お客さんも、個人として話をしている感じで。それは、はたらいている年数や通っている年数も多少関係しているとは思います」

「ただ、「この前行くって言ってたところ、どうだった?」「そのキーホルダー可愛いね〜」なんて言い合って、自分と仕事を分け過ぎないことが、この場所の良いところだなって思います」
自宅の延長線上に「喫茶ランドリー」がある。ここで日々を過ごす人たちは、そんな感覚があるのかもしれません。

「パニック症でも、はたらいていいんだ」。できる範囲で頑張ればいいと思える居場所
ななせさんは喫茶ランドリーではたらく数年前、熱中症で併発したパニック症で約2年はたらけない時期がありました。自宅から出ることも難しく、このまま孤立してしまうかもしれないと追い込まれていたそうです。
「はたらく前に、暑さに弱いこと、パニック症であることなどは一通りお伝えしました。すると、「全然いいよ」の一言で自然に受け入れてくれて」
その言葉は、嘘偽りのないものでした。

「暑さでやられてしまったときも「今日は閉めちゃいな」と気遣ってくれて、新メニュー考案の際は、私が自宅で作っていた「トマサバごはん」を「美味しいいからレギュラーメニューにしてみようよ」と提案していただいたり。実際、リピートして注文してくれる人もいるので、トライしてみてよかったなと思ってます」
「失敗しても大丈夫。新しいことに挑戦したい。そう思えるようになったのは、この場所にいたからこそです」

日常の延長線上のように、はたらけていることが幸せ
「昔からものづくりや絵を描くことが昔からすごく好きだったので、好きを活かせるクリエイティブな仕事に就きたいと思っていました」
しかし、体調を崩したことで、その夢を叶えることは難しいかもしれないと感じるようになったそうです。

「そのときに、自分の時間を見つめ直して。たくさんお金を稼げなくても、大切なもの、ことに時間を使える人生でありたいと思うようになりました。今は、大切で尊敬できる人たちとはたらけること、思ったことを伝えられることが、何より嬉しいんです」
思い描いていた未来とは違っても、愛犬であり、看板犬として可愛がられている「みそ」と、今を大切に過ごすことが、ななせさんにとっての幸せに繋がっているようでした。



