しあわせのカタチ

映画ライター・よしひろまさみちの週刊映画コラム「後は、ご自由に」

#09『マイ・インターン』|映画ライター・よしひろまさみちの週刊映画コラム「後は、ご自由に」

映画ライターで日本アカデミー賞会員のよしひろまさみちさんが、毎月のテーマに合わせて作品を紹介する週刊映画コラム「後は、ご自由に」。

5月のテーマは、頑張れない日があってもいいと思えるようになる映画。第1週目は、AI時代にこそ効率性を求めすぎてはいけない、人と人の対話の大切さを描いた『マイ・インターン』をご紹介。

ファッションECを運営する女性社長の前に現れたのは、70歳のインターン

今年の大ヒット作のひとつに数えられるだろう、公開中の『プラダを着た悪魔2』。その主演を務めたアン・ハサウェイにとって、もうひとつの「お仕事映画」がこの『マイ・インターン』です。『プラダ〜』の06年版は、これから社会に出る人や社会に出たけどまだ仕事の楽しみが分からずモヤモヤしている人に向けたモチベーション映画、今年の『〜2』は酸いも甘いも分かったベテランが業界構造の理不尽に立ち向かう映画。

監督も原作も全く違いますが、『マイ・インターン』は歳を重ねた者にしか分からぬ叡智を自分のリズムを崩すことなく活用していくためのヒントを描いた作品です。そう、この作品の主演はアン・ハサウェイだけではなく、ハリウッドの超ベテラン、ロバート・デ・ニーロ。

妻を看取り、一人やもめの隠居生活を送るベンは、生活の張り合いのためにファッションECで急成長するスタートアップにインターンとして雇われます。自分の子ども以下の同僚・上司が、ベンにとって見るもの全てが新鮮な仕事に打ち込む中、彼はどう立ち回るか。「こんなにうまくいくわけない!」と言いたくなるほど、「みんなのおじさん」になるんです。

余裕、豊富な知識量と経験があってこそできることなので、人生を怠けてきたご老人にはできないことかもしれません。がしかし、年配の人達の言うことや考え方、全てが若い人にとって邪魔なものでしょうか? ここで考えていただきたいのは「対話」です。

SNSで仲間とチャットすることではありません。フィジカルで対面して対話する。この重要性をないがしろにしていることは現代社会の課題ともいえるのではないでしょうか。ベンは一方的に自分の経験をひけらかしたり、指示をしたりすることは一度たりとしません。

対する上司のジュールズ(アン・ハサウェイ)は、最初こそ警戒しますが、彼の誠実な人柄を理解してからは変わります。対話が生み出すケミストリーによって、彼らの関係は唯一無二のものになっていくのです。

いちいち顔を合わせて話をするのは面倒。リアルに人を相手にするのは緊張する。悩みがあったらAI頼り……などなど、ヴァーチャルのコミュニケーションに慣れすぎてしまった方にはハードルが高く聞こえるかもしれませんが、利便性とタイパ・コスパだけを追求した先に何が待っているか。必ず自分の首を締める結果になりますよね。

そうなる前に、まずは身近な人や家族と顔を合わせて何気ない会話をするところから始めませんか? この映画を誰かと一緒に観て語り合うことから見えてくる、穏やかな未来があるはずです。

よしひろまさみち

よしひろまさみち

東京都出身。映画ライター。日本映画ペンクラブ。日本アカデミー賞会員。ゴールデングローブ賞International Voter。音楽誌や女性誌などで編集部員として業務に従事した後、28歳で独立。日本テレビ「スッキリ」で月1回の映画コーナーを11年間に渡って担当したほか、現在も数多くの雑誌やWebメディアで映画紹介の連載を担当。語りかけるような文体や作品と丁寧に向き合ったからこそ綴られる多角的な見解で、多くの映画ファンに支持されている。

Instagram: hannysroom
反田 零

反田 零

神奈川県出身。二級建築士。青山製図専門学校卒業後、設計事務所に入社。2021年よりイラストレーターとしての活動を開始。iPhoneのディスプレイに指で直接描かれる、色鮮やかで情緒的な作風が注目されている。雑誌「Numero TOKYO」の企画や、アーティストがリリースする楽曲のジャケットデザインなども手掛ける。

Instagram: k_sotta_rei

『マイ・インターン』
監督:ナンシー・マイヤーズ/出演:アン・ハサウェイ、ロバート・デ・ニーロ、レネ・ルッソ、アダム・ディヴァイン ほか/DVD、Blu-ray発売中(販売:ハピネット・発売:ワーナー・ホーム・ビデオ)/配信:U-NEXTほかにて配信中

文/よしひろまさみち 
絵/反田零
記事制作/株式会社ZEN PLACE

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