映画ライター・よしひろまさみちの映画コラム「後は、ご自由に」
#20『最高の人生の見つけ方』|映画ライター・よしひろまさみちの、映画コラム「後は、ご自由に」

映画ライターで日本アカデミー賞会員のよしひろまさみちさんが、毎月のテーマに合わせて作品を紹介する、映画コラム「後は、ご自由に」。
8月のテーマは、過ぎ去るものと向き合うヒントが詰まった映画。第20回は、余命宣告を受けた2人が「死ぬまでにやりたいことリスト」を叶えていくうちに、これまで蔑ろにしていたもの、本当は大切にするべきだったものに気づいていく物語『最高の人生の見つけ方』。
世界各国を巡りながら、気づいたのは「何気ない時間」の大切さ
夏といえば旅行。でも「旅行っていつでもいけるよね! 今年はここだけど、来年はあそこいこう!」と言えるのは若い内だけ。また、「定年して落ち着いてからの楽しみにとっておこう」なんて考えている人がいるなら、即その考えを改めて下さい(若い頃の体力は定年後には残ってませんよ〜。動けるうちに動いて!)。
「死ぬまでにやりたいことリスト」=バケットリストというものがありますが、それがオリジナルのタイトルになった『最高の人生の見つけ方』を観たら、人生の夏の時期にやるべきことが少し見えてくるのではないでしょうか。
自動車整備工のカーターと大富豪のエドワードは、共に余命宣告を受け、人生の冬を迎えた老人。性格も生き方もまったく違いますが、同じ病室で入院生活を送ったことをきっかけに親しくなり、一緒に「死ぬまでにやりたいこと」のリストを作ります。
スカイダイビング、ピラミッド見物、世界一の美女にキスをする、見知らぬ人を相手に親切にする……などなど。
エドワードの財力をフル活用して、世界各地を旅する2人は、一見すると人生最後の豪華旅行に出たように見えます(実際豪華ですが)。が、決してそれが目的ではありません。
豪華さを満喫すればするほど、エドワードは財産や社会的な成功にとらわれすぎていたのではという疑念にさいなまれ、カーターは長いこと疎遠だった家族と過ごす最後の時間を無駄にしているように感じるようになります。
そう、この旅は豪華旅行ではなく、それぞれの人生を見つめ直すための時間。
夏だから旅映画、ロードムービーがぴったりくるのはもちろんですが、それ以上に「残された時間」というテーマがより身近に感じられるのではないでしょうか。
夏休みは、イベントだらけで普段とは違う時間を過ごす機会が増えます。でも、どんなに楽しい時間も必ず終わりがきますし、夏の終わりに近づくほど「夏をやり直したい」という気持ちが強くなるものです。
この作品は「死ぬまでに何をするべきか」を教える映画ではありません。
むしろ、いつか終わると知ったとき、今まで見過ごしていた人との何気ない時間が、突然かけがえのないものになる可能性があることを示してくれるんです。



