01|自分の暮らすまちが、楽しいといい
自分に好いモノ、社会に善いコト
自分に好いモノ、社会に善いコト
01|Shonan Soy Studio

自分が“好き”だと思って手にしたモノ。そのモノ、その行為が巡りめぐって社会や人に“善い”コトだったら、その日を晴れやかな気持ちで過ごせるはず。
「自分に好いモノ、社会に善いコト」ではエシカルな商品やサービスを通して、個人そして社会の幸せをつくっている人にお仕事への想いを伺います。
第1回目は、神奈川県・大磯で大豆発酵食品の開発と販売をしている「Shonan Soy Studio」へ。ショールームは1940年代に作られた古民家を改装したもので、縁側には再現が難しい大正ガラスの引き戸が残っています。海風と静けさが心地良い朝の湘南で、代表の小野岡圭太さんにお話を聞きました。

2つのライフゴールを達成するために選んだ
大豆発酵食品
「ここは、僕たちが開発している“世の中にまだない食品”を、実際に食べてもらうためのタッチポイントとして位置づけています」
毎週木曜〜土曜にオープンするショールームには近隣に暮らす人々だけでなく、ブランドの思想や背景に共感したバイヤーが足を運ぶことも多いそうです。ただ、起業は2つのライフゴールを達成するための手段だと話します。
「一つは機会格差の是正です。留学先のアメリカで経済的な理由などから、自分の意思とは異なる道を選ばないといけない人が大勢いることを目の当たりにして。勉強も旅行もご飯だって不自由なく食べられる自分は、恵まれているんだと気付いたんです」
同時に小野岡さん自身が生まれ育った湘南エリアにも、同じような苦境に立たされている人がいるのではと考えたそうです。
もう一つのライフゴールは、日本食を海外に広めること。
2009年に滞在していたカリフォルニアでは、豆腐が5ドルで売られ、健康志向やヴィーガンの流れもすでにありました。一方で、発酵食品は興味を持たれながらも、まだ“未知の存在”。
「でも、だからこそ、大豆の発酵食品に可能性を感じました」
そして、2014年、ニューヨークジャーナルに「納豆を食べて長生きしよう」という記事が掲載されるほど注目度が高まりました。
「現地でも健康のために納豆を食べたいという人は多いんです。でも、においがどうしても無理だって言われる。栄養価や発酵の価値は科学的に証明されている一方で、海外の食文化に合っていない。だったら、食文化に寄り添う形で再開発できるんじゃないかと思ったんです」

心惹かれる個性的な商品。売り上げの一部は「Bite for Bite™」で、子どもたちの未来に繋げる
開発に3年をかけ、今年の秋に発売開始されたチーズのようにグレーターで削って味わう味噌「miso-bushi(みそぶし)」やコーヒーに漬け込みスイーツなどと相性の良い納豆「SOYFFEE™(ソイフィー)」、サラダはもちろんパスタにもおすすめなふりかけタイプのドレッシング「発酵サラダふりかけ」、ヘルシーなおつまみ「ナットウジャーキー」など、他では見られない商品がラインナップする「Shonan Soy Studio」。
「日本人にとっては馴染みが薄い組み合わせかもしれませんが、自国と海外出身の方、両方のフィードバックを反映させながら商品を作っているので、海外に広めるというライフゴールはありつつも、ローカルにも愛される商品に仕上がっていると思います」
機会格差をなくしたい。日本食を世界に広めたい。そんな想いが形となった商品は「Bite for Bite™」という、「Shonan Soy Studio」設立のきっかけとなったプロジェクトの根幹を担っています。
「「Bite for Bite™」は売り上げの一部を還元して、世界・日本の貧困地域に乾燥大豆を寄付するプロジェクトです。2020年度は100kgを超える乾燥大豆を湘南エリアの子ども食堂へ寄付し、本当に食事を必要としている方々へ届けました。以降も継続的に寄付活動を続けています」
常温で約3年間保存可能であることや、高タンパクであること、またスープやカレーなどに使える汎用性の高さなども考えて、乾燥大豆を選択したそうです。

身の回りで出来ることから
機会の格差をなくしていく
また「知識という富の再分配」として、自由に本を持って行ったり、置いて行ったりできるフリーブックコーナーを入り口に設けたり、今年からはショールームの2階を無償レンタルスペースとして貸し出したりと、新しいチャレンジをする人の背中を押す取り組みを行っています。
「極力リスクがない状態でトライできる環境って、社会全体にとって必要だと思うんです。レンタルスペースは多様な生き方、働き方を見つけてもらうきっかけになればいいなって。そこで成功しても、ちょっと違うかもと思ったとしても前に進んだことにはなると思うから」
小野岡さんがライフゴールとしている機会格差の是正は、色々なカタチとなって人々に広がりつつあります。“好いモノを世に出し、社会に“善いコト”を継続して行ってきた小野岡さんが思う“いい人”とはどのような人なのでしょうか。
「言ったことを変えない人ですかね。話していることとやっていることにギャップを感じさせないといいますか。 そうであれば、他者を裏切るようなことは起きないでしょうし、いい人なんじゃないかなと思います」

他愛もない話にこそ
他者の幸せに繋がるヒントがある
最後に小野岡さんにとっての幸せとは何かを伺いました。
「機会格差が小さくなることと日本食が海外でもっと受け入れられるような状態になること。これが、私自身の一番の幸せに直結するかなと思います。それには私の周りにいるお客さんや関係者の方達、そして社員がウェルビーイングな状態で生きていられることが大切だと思っています。
大きなコミュニティではないですが、皆が自分の役割に納得感を持てること。お金だけでなく心身も含めて潤っている感覚があること。人と仕事をする以上、意識していることです。
それには結局、一人ひとりと向き合うことが不可欠。仕事の話は大切ですが、他愛のない話の中に他者と強く繋がるためのヒントがあると思っているんです。私が毎週、木曜・金曜にここへ足を運ぶ理由はそこにあるんですよ」
ものづくりの源、そしてその先にあるのは、数字では測れない人と人との繋がりであること。小野岡さんの言葉は、そんな当たり前でいて忘れがちな豊かさを、そっと思い出させてくれました。


