13|海を知る
波のまにまに、地域おこし
波のまにまに、地域おこし
12|資料価値、ってなんだろう?

福島県・いわき市で暮らす野村史絵波さん。東京、奈良での暮らしを経て地元でもあるこの地に戻ってきたのは、2023年のことです。海からほど近い古民家で夫、そして1歳の子どもと暮らしながら、地域おこし協力隊として故郷と未来を繋ぐお仕事をしています。
連載「波のまにまに、地域おこし」では、そんな史絵波さんが好奇心を源に海、街、人を紡いでいく様子をお届けします(たまに日常の便りも)。第12回目は、資料としての価値を生む、はじめの一歩「調査をするということ」について。

仕事で関わっている漁具(漁業の道具)のアーカイブ活動の中で、一番大変で一番おもしろい「調査」について少しご紹介します。なぜ調査をするのかというと、そのモノの資料価値を高めるために必要だからです。
わたしの活動で扱っている漁具は、もともとは廃業した漁師さんから譲ってもらったりして倉庫に集められた「使われなくなった道具」です。
それらの道具が使われていた年代は様々。平成の時代まで使われていたであろう、割と新しいものもあります。「新しいもの」と聞くと、なんだか資料価値なんてなさそうに思えます。
大正時代のものだとか、もっと古いモノだとか聞くと、そりゃあ貴重だと多くの方が思うでしょう。なぜ貴重だと思うのか。それは、今ではもう、その姿形ではつくられないモノが今にまで残っているから。さらに言うと、それが大正時代という約100年前につくられたという情報が今ここに残っているから。

逆に捉えれば、そのモノが使われていた背景や使い方などの情報が残ってさえいれば、たとえ最近のモノだったとしても、先の未来でその時代を語る「資料」になる可能性があるのです。
活動が始まった当初、漁具を集めている地域のじいちゃんたちは、「見ようによっちゃ(見方によれば)ガラクタだぁ」と言っていましたが、それは本当にその通り。使い方もわからない、見たことすらない漁具は、わたしにとって最初はガラクタでした。
だけど、これを後世に残したいと言っている。貴重そうではあるし、おもしろそうなモノだけど、果たして後世に残す意味は何なのだろうかと頭を悩ませていたことを覚えています。
しかし、活動の中で博物館を訪ね、話を聞かせてくれた学芸員さんたちにこの「資料価値」というものの見出し方を教えてもらいました。

今はまだガラクタ同然の漁具だけど、情報が残っていけばこの地域の歴史を語り継ぐものになる。万が一、現物が失われてしまったとしても、情報さえ残っていけばこの地の歴史は語ることができる。
「調査」の意義をとてもおもしろいと思うと同時に、じいちゃんたちはきっと、この場所で生きてきた誇りと豊かさを、漁具を通して人に伝えたいと思っているのだと気づくことができました。
冒頭で「一番大変だ」と言ったのは、この膨大な漁具ひとつひとつの情報を、これから集めていかなければならないからです。しかも、元の持ち主が存命かどうかもわかりません。せめて、引き取ったじいちゃんが「誰から」「いつ」引き取ったのかとか覚えていてくれていたらいいのだけど…。
その情報をもとに、さらに引き出せる情報がもっともっとたくさんあるのです。使っていた漁師の屋号、船名、使用年代、獲っていた魚種、などなど。調査でわかる歴史やそれを紐解くおもしろさはまた今度ご紹介します。


