12|資料価値、ってなんだろう?
波のまにまに、地域おこし
波のまにまに、地域おこし
11|愛着の育て方

福島県・いわき市で暮らす野村史絵波さん。東京、奈良での暮らしを経て地元でもあるこの地に戻ってきたのは、2023年のことです。海からほど近い古民家で夫、そして1歳の子どもと暮らしながら、地域おこし協力隊として故郷と未来を繋ぐお仕事をしています。
連載「波のまにまに、地域おこし」では、そんな史絵波さんが好奇心を源に海、街、人を紡いでいく様子をお届けします(たまに日常の便りも)。第11回目は、物を後世に伝えるために必要な愛着の育て方について。

漁具(漁業の道具)のアーカイブ活動を始めて3年。今までは地域おこし協力隊の立場で請け負い仕事として行ってきました。実のところ、地域おこし協力隊には任期があり、わたしは今年度11月でその任期を終える予定です。
最終年度である今、この活動をどう継続できるかを考えています。
今の地域に地域おこし協力隊が入ったのは令和5年のこと。わたしが隊員第一号です。「地域で集めた漁具を整理するのを手伝ってほしい」という地域住民の声のもと、今わたしはこの活動を支援しています。保管している漁具は、今わかっているもののうち、古いものだと100年近く前のものもあります。

時間の経過とともに形や素材が代わり使われなくなり、今後その形では作られることがなくなった漁具を、この地域の産業を支えた文化的資料として後世に残していきたい。
そんな思いを持った地域のおじいちゃんたちと一緒に、保管している倉庫でちまちま記録・整理しています。腰が痛いとか目が見えないとか、冗談混じりに笑って作業しているけど、半分は本当にしんどくなってきているみたいです。
それでも懐かしい道具に触れて当時の風景を楽しそうに思い出して語り合っていて、この時間は結構大事な時間なんじゃないかとも、側で見ていて思います。このおじいちゃんたちも、もうみんな70~80代。
いつ身体が動かなくなってもおかしくない年齢です。組織の高齢化も心配ですが、なにより不安なことは、目の前の漁具の大半はわたしが生まれた頃にはすでに使われておらず、その名前も使い方も、世代的にわたしはなにも知らないのです。

この人たちがいるうちに、話を聞いて記録しておかねば。倉庫の中にある、ものすごく膨大な量の漁具を見回してから、一瞬絶望して、まぁ着実にやっていくしかないと自分を鼓舞するのが毎回のルーティンだったりします。
「後世に残したい」という気持ちを受け取ったのはいいものの、具体的に残すアクションを起こしていくのは我々の世代。使われていた時代を知らない物を伝えていく、その難しさたるや。
伝え続けるためにはきっと「愛着」が必要で、漁具を知らないわたしも、なにか愛着を育てていかなければならないと思いました。これに気づいたあたりから、地域の見方やおじいちゃんたちとの接し方を見直すようになりました。

漁具は直接的には知らないけど、3年過ごしてきたこの地域と、漁具を懐かしむおじいちゃんたちの面白さは知っている。わたしが育てる愛着は漁具に対するものではなくて、目の前の「地域」と「おじいちゃんたち」、きっとこのふたつに対するもので十分なんじゃないか、と思うようになりました。
あらゆるものにハードルを感じることもあるけれど、活動を続けるためには自分が楽しんでいられることが重要。だから、自分でハードルを下げる努力をしていけたらいいなと思います。
自分ひとりでやるには若干重いので、同じように楽しんでもらえる仕掛けをつくったりして、一緒に楽しんでくれる仲間を探しながら、この活動を続けていきたいです。


