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波のまにまに、地域おこし

波のまにまに、地域おこし
10|アナログネイティブ

福島県・いわき市で暮らす野村史絵波さん。東京、奈良での暮らしを経て地元でもあるこの地に戻ってきたのは、2023年のことです。海からほど近い古民家で夫、そして1歳の子どもと暮らしながら、地域おこし協力隊として故郷と未来を繋ぐお仕事をしています。

連載「波のまにまに、地域おこし」では、そんな史絵波さんが好奇心を源に海、街、人を紡いでいく様子をお届けします(たまに日常の便りも)。第10回目は、回覧板というアナログなコミュニケーションから生まれる地域と繋がる感覚について。

この4月で、いわきにUターンしてきて丸3年が経ちました。移住前までは仕事の都合で2年に1回の頻度で引っ越していたので、3年という年数をなんとなく新鮮に感じつつ。

もう3年も経ったのかと意外に早く感じているのは、地元で過ごしていたときの感覚が体に戻ってきたからなのかもしれません。

そんなことを考えていたら、ガラガラっと玄関の引き戸が開いて、すぐに閉まる音がしました。咄嗟に「どうもでーす」と玄関に届くくらいの大きさで声をかけ、後で玄関を見に行くと、見慣れたバッグが置いてあります。何かとお思いかもしれませんが、よくある日常のワンシーン。回覧板が届きました。

わたしのいる地域は高齢化が進んでいることもあり、主要な情報網として回覧板が使われます。回覧板にご縁がない方も多いと思うので一応紹介すると、自治体や区からの連絡事項や配布書類をまとめ、各家庭で順番に回して情報共有するファイルです。

自治体が配布するフリーペーパーとか、近所の工事のお知らせとか。わたし自身も地域おこしの仕事をする中でチラシを配ることがあるので、地域の方々に知ってもらうのに欠かせない手段になっています。

回覧板は回す家の順番が決まっていて、大体は数軒先までのご近所さんの間で回します。なので、前後の順番のご近所さんとは、家にいないときはここに置いておいてねとか、勝手に玄関置いておくね、とか、お互いの都合を話してストレスなく回覧板を回す工夫が行われています。

月2回の頻度で回覧板は回ってくるので、大事なコミュニケーションです。ちなみに、さっきの「勝手に玄関を開けて置いていくシステム」は特に話し合って決めたわけではなく、幼少期にわたし自身がそうやって回覧板を届けていたから、自然と受け入れられたものです。越してきて間もない頃は、夫がびっくりしていました。

もちろん、この「勝手に玄関開けるシステム」は届けてくれる方との信頼関係がないと成り立ちません。回覧板以外にも、郵便屋さんもこのシステムを使うときがあります。これは、担当の方が大体決まっていて、顔を見知っているからできること。うちのポストは小さいので、手紙が入らないときはよく手渡しで受け取ります。

家にいてバイクの音が聞こえたら、ポストに入れる前に手紙を直接受け取りに行ったりもします。いつもありがとうございます、とお礼を伝えているうちに、「今日は(手紙が)たくさんあったので助かりますー」とか話してくれたりして。お顔を知れること以外に、会話ができると安心できて、またお礼を伝えたくなる。

個人的には良い循環が生まれている気がします。このスマホひとつでかんたん情報共有、という時代に生きつつも、このアナログ仕様も嫌いではありません。こうして人との関係を築いてきたな、と、幼少期の頃に学んだ大事なことを思い出す一瞬でもあります。

デジタルネイティブならぬ、アナログネイティブ。育ちの中で培われてきた感覚ですが、今あらためてこの地域で暮らす私にとって、これからも大事にしていきたい感覚です。

野村史絵波

野村史絵波

1994年生まれ。福島県いわき市出身。女子美術大学卒業後、300年の歴史を持つ奈良の老舗生活雑貨店へ入社。仕事を通じてまちづくり、故郷への関心が深まり、2023年に地元へUターン。現在は夫と子どもと3人で暮らしながら、地域おこし協力隊として活動中。地元漁師が使ってきた漁具の調査・記録をしながら、資料館をつくることを目指している。

Instagram: tn_tkrn

文・写真・絵/野村史絵波
記事制作/株式会社ZEN PLACE

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