02|元気な街を発信を続ける意味
ローカルシティ新潟島
ローカルシティ新潟島
01|自分の暮らすまちが、楽しいといい

新潟県新潟市。日本海と信濃川に挟まれた小さな島のような地域を、地元の人たちは親しみを込めて「新潟島」と呼んでいます。そんな、ちょっと珍しい島内にある上古町には、築100年の長屋を改装した複合施設「SAN」があります。
今月から始まる連載「ローカルシティ新潟島」では、「SAN」立ち上げ人・副館長の金澤李花子さんがひとつの場所を通して生まれる“何か”に目を向けて気付いた、心地良い暮らしへの糸口が綴られます。
第1回目は「名産から暮らすまちを知る」というテーマで、「SAN」のお客さん発案で行われたイベントから感じたこと。

帰りたい場所が素敵な街だったら
「自分の暮らすまちが、楽しいといい」。そう思って今から4年前、地元で始めた地域の交流拠点のことを、ご紹介したいと思います。私が生まれ、今住んでいる新潟市は人口75万人の地方都市。歩いて10分の日本海と、日本一長い川・信濃川の河口に挟まれた、小さな島のようなところ(通称・新潟島)にある街に暮らしています。
街には適度に繁華街がいくつかあったり、少し足を伸ばせば山や海や川でアウトドアができたり。素晴らしい文化芸術に触れられる芸術ホールがあったり、歴史的建造物も多かったり。「なんとなく、不都合のない街、それが私の暮らす新潟市です。
それでも、たいていの若者はこう思うのです。
「東京に出たい、新潟よりもっと大きなまちに出たい」と。
かくいう私も、そのうちの一人。「キラキラした仕事や暮らし」に漠然とした魅力を感じてそれから8年間、東京で雑誌や広告をつくっていました。今振り返れば、東京らしい大きく夢のある仕事。毎日毎日働いて働いて働いて...たまに遊んでまた働いて。元気な20代、ただひたすらに目の前の楽しみを享受していました。

そんな時期にやってきたのがコロナ禍。これから先、どこでどんな風に暮らしていきたいか、考えた先にあった唯一の選択が地元・新潟市に帰ること。そして、「自分の暮らすまちが楽しい場所であったらいいなぁ」という期待でした。
先の通り、新潟市は満遍なく何でもあって不都合のない街。逆に、すぐ「何もない」と言われる県でもあります。流行り物を追いたい人からすれば、流行りの店ができるのが遅いし、東京と比較されることもしばしば。「ない」というマイナスにフォーカスの当たりやすいのが現状です。
帰りたい場所が素敵な場所であってほしい。暮らす街が楽しい場所であってほしい。私が、地元・新潟市で地域の交流拠点「上古町の百年長屋SAN」をつくった背景にはそんな思いがあります。

今あるものに、価値を見出す
新潟市には、古町(ふるまち)という1〜13番町が繋がる商店街があります。その中でも特に1〜4番町が、上古町商店街(通称・カミフル)という私の活動拠点SANのあるエリアです。
2021年から始まった築100年を超える長屋を活用したSANは、新潟の伝統菓子を体験する喫茶やイベントスペース、地域の情報が集まる本棚やデザイン編集室、シルクスクリーンのプリントルームがあり、老若男女さまざまな方がお越しくださる複合施設。

平日は近隣のお客さま、週末には観光でいらっしゃるお客さまに、新潟市周辺をご案内しながらこの地域のことを知ってもらおうと活動しています。
毎日の営業はもちろん、毎月さまざまな企画やトークイベントを開催し、SANを訪れる人に“何もないから楽しい”と思ってもらえることが私のテーマ。
雑誌や広告で培った編集的な視点で、人と人を繋いだり面白いものを紹介したり、“今あるものをより良いと思える”という価値を提案したりすることが活動の軸で、大きなやりがいでもあります。

例えば、毎月開催している「日本酒を楽しむ会」。元々、日本酒好きな常連のお客さまが、お酒を飲めない人でも新潟の日本酒を知るきっかけになれば...と始めたイベント。新潟には90ほどの日本酒蔵がありますが「多すぎて、正直違いがよくわからん!」という新潟県人に向けた、試飲しながら日本酒のことを知ることができるという、日本酒愛あふれる企画です。
今では参加者によるチャットグループが100人を超え、参加者の繋がりでコミュニティが広がってきています。
こうして、「誰かのやってみたいが叶う場所」としてSANを活用いただけていることも、私自身の地域で活動する価値です。その積み重ねが、自分の暮らす街や仕事、暮らしを豊かに、そして「暮らしていて楽しい、この街に住んでいてよかった」と誰かの肯定感をあげることにも繋がっている気がしているのです。
きっと、人それぞれの肌に合う土地や人がいて。私にとってはちょうど心地よく暮らせるのが、地元・新潟市。ちょっと疲れたら、たまに外に飛び出して刺激を浴びてまたこの地域で生きていく。
そうやって今の自分の最適解を探しながら、ちょうどいい、心地いいバランスをこれからも大切にしていきたいと思います。新潟にいらした際には、ぜひお立ち寄りください。
初回ということもあり、長くなりましたが…次回からはもう少しコンパクトにローカルでの暮らしを伝えられたらと思ってます。


