波のまにまに、地域おこし
波のまにまに、地域おこし
16|吹っ切れ

福島県・いわき市で暮らす野村史絵波さん。東京、奈良での暮らしを経て地元でもあるこの地に戻ってきたのは、2023年のことです。海からほど近い古民家で夫、そして1歳の子どもと暮らしながら、地域おこし協力隊として故郷と未来を繋ぐお仕事をしています。
連載「波のまにまに、地域おこし」では、そんな史絵波さんが好奇心を源に海、街、人を紡いでいく様子をお届けします(たまに日常の便りも)。第16回目は、

先日、写真展を開催しました。使ったカメラは普段、家族や風景を撮っているコンデジ。特別に写真が好きでこだわって使っているというより、気軽な記録みたいな感覚で撮っていました。
今までは写真データをスマホに移して見るくらいだったから、印刷することも含めてなんだか照れ臭い気もしています。けど、2週間の展示を終えてみて、ちょっとだけ一皮むけた気持ちにもなっています。
展示のタイトルは「かたちの理由(わけ)、理由(わけ)あるかたち 漁具写真展」。普段仕事で関わっている漁具(漁業の道具)のアーカイブ活動の一環で、自分で企画した初の写真展です。
この展示は、地域の文化的資料として整理・調査した漁具の一部を撮影して展示したものです。漁具に触れ始めて3年、この活動を支援するうちに芽生えた漁具に対する愛着。それと、道具というものに対する偏愛的感覚。

もともと大学でプロダクトデザインを専攻していたので、いつの間にかそういう感覚が育っていたのかも。この活動を機に自覚した癖(へき)を、せっかくだからかたちにしてみようと思いました。
今年度中にこの仕事の任期を終えるからか、今この愛着や偏愛という自分の感覚に向き合っておこう。そうしたら、ちょっとだけ後の自分の人生がおもしろくなるんじゃないか、なんて淡い期待も込めて。
わたしには漁具がおもしろいものに見えているけど、そう誰かに伝えると「どんなふうに?」と返ってくる。この会話の返しがいつも自分の中で言葉にならなくて悩むことがしばしば。言葉にするって、難しい。
漁具ひとつひとつにわたしの中の「たまらん(たまらない)ポイント」がちがうので、本当はひとつひとつ見せながら話せたら楽なのだけど、漁具は「多い・重い・大きい」の三拍子が揃っていて難しい。

でも、なんとか言葉にできたら、いくらか共感してもらえそうな気もしていて、そのもどかしさとも奮闘してきました。悩むたびに身近な家族や友人に話を聞いてもらい続け、出した答えは「シンプルに伝えたいことを、素直に表現したらいい」ということでした。
ありきたりな言葉かもしれないけど、今の自分にしっくりきました。活動に関するいろんなことを考えてきた時間と、一緒に考えてくれる人たちの存在が自信になって、なんだか吹っ切れたのかもしれません。
わたしの視点をカメラに置き換え、ひとつひとつ見てほしかった漁具の「たまらんポイント」を写真で出力してみる。A4とかA3の大きさで印刷することで、思っていた以上に、明確にわたしの中の偏愛が浮き彫りになる感覚。
まだまだ一部でも写真のおもしろさを知れたこと、新たな媒体で自分を表現してみるという壁を越えられたことが、さらに自信になった気がします。
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