16|吹っ切れ
波のまにまに、地域おこし
波のまにまに、地域おこし
15|「もの」「こと」と、「ひと」の距離

福島県・いわき市で暮らす野村史絵波さん。東京、奈良での暮らしを経て地元でもあるこの地に戻ってきたのは、2023年のことです。海からほど近い古民家で夫、そして1歳の子どもと暮らしながら、地域おこし協力隊として故郷と未来を繋ぐお仕事をしています。
連載「波のまにまに、地域おこし」では、そんな史絵波さんが好奇心を源に海、街、人を紡いでいく様子をお届けします(たまに日常の便りも)。第15回目は、”ぎょぬぐい”のワークショップで感じた、「もの」「こと」と、「ひと」の距離について。

過ごしやすい気温が続くこの頃、市内各地で毎週のようにイベントが開かれています。
作家さんのアクセサリーが並ぶクラフトマルシェや農家さんの新鮮な野菜が買える物産市など、週末に家族連れで楽しめるちょっとした非日常時間。
わたしも仕事の一環で、市の観光PRのイベントに出展してきました。
出展しないかと声をかけてもらったとき、自身の活動で紹介したいことはあるけれど、どうやって紹介したらいいものか悩みました。
普段やっている漁具(漁業の道具)のアーカイブ活動は、なんというか、全然キャッチーじゃないというか。
漁具? アーカイブ? 実際の漁具を見ても、なんだろうこれ? という反応がほとんど。この活動を始めてから、いつも「どうしたら漁具をみんなにもおもしろがってもらえるか」ということが頭の中をぐるぐるしていますが、砂埃まみれの説明必須の道具たちの魅力を伝えることに高いハードルを感じてもいました。

イベントに出ることで、いつもと違うやり方で直接自分の思いを届ける経験ができるかもしれない。
新たな方法を探る実験ができるいい機会をもらえたのではないかと捉えて、初めてワークショップを企画しました。
その名も、「ぎょぬぐい」ワークショップ。漁具をかたどったスタンプを使って、オリジナルの手ぬぐいをつくるというもの。
スタンプ本体は、漁具をイラストに起こし、消しゴムはんこで制作しました。参加者には、そのスタンプと10色のインクパットを自由に使って、一枚の手ぬぐいをデザインして持ち帰ってもらいました。
参加してくれた人は子どもたちも多く、好きな色、好きな形、好きな配置、本当に自由に楽しんでくれていました。
このワークショップを通して伝えたかったことは、「港町の文化とともにある道具の存在」、そして「“愛着”がものを大事に使い続けるために必要」だということ。

この3年間の活動を通して、わたし自身が地域から学んだことでもあります。慣れた場所ほどその良さや魅力が見つけにくいけど、歴史や文化にも自分が好きになれることは潜んでいる。
あとは、同じような都市化開発が進んで似たような風景が増えてきていると感じるけど、それでも絶対的に差別化できるもの、それが歴史だと捉えることもできます。
慣れた地の歴史を知ることは、誇れることや自分の好きを見つけることにも繋がっていました。
いわきという漁業で栄えた歴史をもつこの地を、漁具を通して知ってもらうことができたのなら嬉しいです。
手ぬぐいという使い方も様々且つ使い倒せる身近な道具に、ものを大事にできる社会になってほしいという願いを託します。


