09|世界は、わたしのためにある(と思ってみる)
古民家暮らし、「かのや」の青梅日日記。
10|呼吸で頭を掃除する
古民家暮らし、「かのや」の青梅日日記。

山々に囲まれ、すぐそばには多摩川が流れる青梅の古民家「かのや」。暮らすのは織さんと夫と6歳の双子の子どもたち。ここでは何かを成し遂げるためではなく、日々の中に宿る感覚を丁寧に受け取ることから始まります。
連載「古民家暮らし、「かのや」の青梅日日(にちにち)記。」では、幸せを“探す”生き方から、“感じる”生き方へと戻った織さんと家族の日々が綴られます。
第10回目は、呼吸を意識することで生み出す心の余白について。

時々、夜とも朝とも言えない時間に目を覚ましてしまうことがあります。考え事が独り歩きし、なかなか眠れなくなる。そんな時、スマホを開いてしまったが最後、何とも不快な朝を迎えてしまいます。
そういえば、子育てと仕事の両立で頭の中がいっぱいだった頃にも、思考に追いかけられるような夜を何度も経験したものでした。そんな状態をどうにかしたくて見つけたのが、オンラインのヨガクラス。
そこで、ゆったりとしたストレッチや呼吸法を教えてもらいました。思考で頭がいっぱいな時は、呼吸も浅く、身体も固くなっていることが多いのです。私が好きなのは、厳しい動きではなく布団の上でもできる、ゆるやかで伸びる動き。

「体側が固くて伸びたがってるな」
「足の裏が揉んで欲しがってるな」
その時々の身体の声を聞きながら、気持ち良いと感じる動きをしてあげる。すると、身体が“くぅ〜〜!”と喜んでいるのが分かります。最後は目を閉じて呼吸に集中。おしりの下の仙骨から背骨を通って頭頂へ、吸う息と吐く息が行き来する感覚だけを感じる。
すると身体はじんわり温まり、ザワザワしていた思考も静まり、視界が澄んでいくのを感じます。地味ですが、こまめに繰り返すことで以前のような思考のうるさい声はずいぶん静かになりました。
特に呼吸は、道具も何もいらない。思い立ったらどこでも出来る。面倒くさがり屋な私には、これ以上ない方法でした。今ではすっかり日常の一部です。
朝起きた毛布の上で。仕事を始める前、パソコンが起動する間。コンビニのレジに並ぶ数十秒。
そんな隙間に、背骨を感じながらゆっくり呼吸をしてみる。息で頭の中を、そっと、できる時に掃除するような感覚です。

思考の奴隷になっていた頃は、恐怖や不安、焦りや比較ばかりを感じていました。その状態で行動しても、解決にならないどころか、ますます不安は大きくなっていく。
そうじゃない、私が本当に感じたかったのは、安らぎや幸せ、満ちる感覚。それは思考で探すものではなく、身体で受け取るものだったのだと、呼吸が教えてくれました。
今はもう、夜とも朝とも言えない時間に目が覚めても、静かに安心していられます。呼吸が、ここに戻る道を知っているから。
今日もし思考が騒がしい瞬間があったら、ほんのひと呼吸だけ、身体に戻ってみてください。そのひと呼吸は、自分に戻るための道しるべになってくれるはずです。

