しあわせのカタチ

古民家暮らし、「かのや」の青梅日日記。

古民家暮らし、「かのや」の青梅日日記。
04|きゅん、とするほうを選ぶ

山々に囲まれ、すぐそばには多摩川が流れる青梅の古民家「かのや」。暮らすのは織さんと夫と6歳の双子の子どもたち。ここでは何かを成し遂げるためではなく、日々の中に宿る感覚を丁寧に受け取ることから始まります。

連載「古民家暮らし、「かのや」の青梅日日(にちにち)記。」では、幸せを“探す”生き方から、“感じる”生き方へと戻った織さんと家族の日々が綴られます。

第4回目は、物を家に迎え入れるとき、大切にしている気持ちについて。

昔から、インテリアショップや雑貨屋さんを巡るのが大好きで、いろいろな家具や雑貨を見て、触れてきました。貯めたお金で欲しかった家具を買い、自分の部屋を少しずつ彩っていく過程は、今思い返しても、とても楽しい思い出です。

今は、ネットでの買い物が当たり前になりましたね。たくさんのものを一度に見比べられるのは便利ですが、同時に、情報が多すぎるとも感じています。価格の比較、機能やスペック、人気ランキングや口コミ。

本当に自分が欲しいのか、必要なのかという「自分の感覚」よりも、「外側にある基準」が、いつの間にか判断を覆ってしまう。

私も20代の頃は、流行っているものや、友人が持っているものにときめいていました。けれど、流行や損得で選んだものは、一時的な安心や満足しかくれず、なぜか、すぐに飽きてしまうのです。

周りと同じものばかりを選んでいると、気づけば、無難なものばかりになることに何度も失敗して気づきました。

そうした経験を重ねる中で、私の中に出来たひとつの物選びの基準。それは、物を選ぶとき、「好き!」と心の針が動くものを選ぶこと。流行や理屈よりも先に、心が「きゅん」と反応するかどうか。この感覚は、とても正直で、強力です。

例えば、推し活をされている方が推しについて語るときの、あの生き生きとした表情。同じように、物を選ぶときにこの「好き!」という感情が湧いた瞬間、それは、暮らしの中の“推し”に出会った合図なのです。

AESTHER CHANG「EYES WIDER」

最近の推しは、一枚の絵。見つけた瞬間、「この絵を、わが家にお迎えしたい!」と一目惚れでした。絵は、日常生活の役に立つわけでもなく、お腹を満たしてくれるわけでもありません。

それでも実際に飾ってみると、部屋の空気がすっと変わり、その前を通るたび、「ああ、きれいだな」と心が穏やかに満たされていきます。

料理に使う道具も同じです。竹でできたおたまや、アフリカの部族が作った木のスプーン。少し変わったものを見つけては、集めています。それを手にして料理をするたび、ふふっと、心が喜ぶ。

外側の基準に反応して「良さそう」と頭で判断するのではなく、見たり、触れたりしたときに思わずにんまりしてしまう。その身体の反応を、物選びの羅針盤にしています。

こうして、自分だけの「好き」や「お気に入り」に出会えることは、人生の中の、小さな幸せ探し。好きのエネルギーを放つものに囲まれていると、自然と機嫌よく、心地よく過ごせます。

だから私は、何度失敗してでも、自分だけの「好きの感覚」を見つけていたいのです。

そしてもうひとつ、「好き」を大切にする中で気づいたのが、長く使えるかどうか、という視点でした。どんなにデザインが気に入っていても、すぐに壊れてしまうものや、使えなくなってしまうものは、やはり少し、悲しい。

例えばテフロン製のフライパン。軽くて便利でしたが、手に馴染んできた頃に加工が取れてしまう。1〜2年しか使っていないフライパンをゴミに出すたび、やはりどこか、胸が痛みました。物は、最後の寿命が尽きるまで使ってあげたい。

そんな思いから、手入れをしながら長く使える鉄製のものを選び、古くなった木製の持ち手も自分で交換できるような、シンプルな作りのものを好むようになりました。

性能や機能性よりも、自分で育てていけること。そうした物のほうが、傷や汚れも“味わい”に変わり、自然と愛着が湧き、簡単には手放せなくなるのです。

こうして、暮らしの中のものを、自分の「好き」が動くもの、そして長く使えるものへと、少しずつアップデートしている最中のわが家。

ところで最近、もふもふの毛布を新調したところ、あまりに気持ちが良くて、朝、誰も布団から出てこないという予期せぬ事態が発生しています。

さて、これはどうしたものか…。

織 ORI 「かのや主宰』

織 ORI 「かのや主宰』

東京都青梅市にあるおよそ築100年の古民家に、夫と双子とともに暮らす。建築士・インテリアデザイナーとしての経験を生かし、古い建物が持つ美しさを大切にしながら、その人が本当に心地よく生きられる暮らしを、かたちにする手伝いをしている。

文・写真/織 ORI
記事制作/株式会社ZEN PLACE

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