01|やり直しという未来
自分に好いモノ、社会に善いコト
自分に好いモノ、社会に善いコト
02|kittoi

自分が“好き”だと思って手にしたモノ。そのモノ、その行為が巡りめぐって社会や人に“善い”コトだったら、その日を晴れやかな気持ちで過ごせるはず。
「自分に好いモノ、社会に善いコト」ではエシカルな商品やサービスを通して、個人そして社会の幸せをつくっている人にお仕事への想いを伺います。
第2回目は、障害の有無に関わらず、誰もがワクワクして使える商品を世に届ける「kittoi」。そこに並ぶのは、「福祉用具」という枠を超え、誰もがフラットに「着たい!」と思える割烹着。この割烹着が生まれるまでには、あるご夫婦の日常と、そこから見えてきた「みんなにやさしい」という想いがありました。

「きっと良くなる」という願いを込めて
「ドイツ語で相手の幸運を祈るおまじないの言葉『toitoitoi(トイトイトイ)』と『きっと良くなる』の『きっと』を組み合わせて『kittoi(キットイ)』です」
そう話してくれたのは、代表の堤大洋(ともひろ)さん。大洋さんは車椅子ユーザーのパートナー・志歩さんとの生活の中で、誰もが楽しく使える割烹着をつくろうと決意しました。
志歩さんが車椅子での生活になったのは、ちょうど10年ほど前。日々の家事のなかで、ずっと気になっていたのがエプロンの使いにくさだったといいます。
「車椅子のタイヤに生地が擦れて汚れてしまったり、座った状態で着ると首元が苦しかったり……。ちょうどいいものが、なかなか見つからなかったんです」

イラストレーターでもある志歩さんが、自身のSNSに「こんな形があったらいいな」と理想を絵に描いて投稿したところ、それを見た大洋さんの友人が「作ってみるよ」と手を挙げてくれたそう。
「最初の試作品を実際に着てみると、妻にとって使いやすいのはもちろん、車椅子を使わない私が着ても『これ、すごく楽で使いやすい』と驚きの発見がありました」
被るだけでさっと着られて、背中もあいているから動きやすい。これは車椅子の人だけじゃなく、いろんな人に喜んでもらえる。そんな確信が、商品化への一歩となりました。

ワクワクからはじまる、みんなのものづくり
「福祉用具」と聞くと、機能性やシンプルさをイメージする人は多いかもしれません。しかし、kittoiが大切にしているのは、「可愛い」「着てみたい」と思えるワクワク感。
「『障害があるから、仕方なくこれを使う』のではなく、まずは見た目にときめいてほしいんです。かわいくて、しかも機能もバッチリ。これが私たちの理想でした」
ものづくりへのこだわりは、商品の届け方にも表れています。たとえば、生地はあえてデッドストック(売れ残り品)を活用。そうすることで、環境に配慮しつつ、できるだけ手に取りやすい価格で届ける工夫をしています。
また、セールや卸売をしないという決断も、そのひとつ。大洋さんはこう語ります。
「シーズンごとの制作をしないことも、無理のないスケジュールで心地よく働ける環境を守るうえで重要です。締め切りに追われて急いで作るのではなく、対話を大切にしながら、ゆっくり進める。それがkittoiらしいものづくりだと思っています」

身近な人のほしいが、みんなの心地よさに
制作の過程では、多くの車椅子ユーザーの方にヒアリングも行ったといいます。しかし、ブランドのベースは、あくまで「妻の志歩さんが本当にほしいもの」にこだわりがあるそうです。
「背中が大きく開いているから、座ったままでも腕が通しやすい」「首元が詰まらないから、長時間着ていても苦しくない」
こうしたこだわりは、すべて志歩さんの日常から生まれた切実な願いです。

「車椅子ユーザーの方のアドバイスはもらいつつ、全員の意見を取り入れすぎてコンセプトがブレてしまわないよう、まずは妻のための使いやすさを突き詰めました。その結果として、みんなにとっての心地よさにつながっていけばいいなと」
kittoiのアイテムには、そんな温かな視線が溶け込んでいます。実際にkittoiの割烹着を愛用している人たちからは、日々喜びの声が届いています。お二人は笑顔で顔を見合わせながら、お客様との思い出話をしてくれました。
「以前、京都でのポップアップに出店した際、割烹着を購入されたお客様が、翌日、それを着て再び会いに来てくれて。『これ、本当にいいですよ!』と目の前で伝えてくれたんです」

境界線のないフラットな世界へ
「障がい者」と「健常者」。世界は無意識に、そんな言葉で境界線を引いてしまいがちです。ですが、お二人が願う未来は、もっともっとフラットになってほしいというものでした。
「まずは『知ること』が、想像力を広げるきっかけになると思うんです。kittoiが多くの人の日常に溶け込むことで、障がい者の人に対する理解が自然な形で深まってほしい、という想いがあります」
志歩さんは、続けてこう語ります。
「目が悪くなったら眼鏡をかけるのと同じように、歩きにくいから車椅子を使う。ただそれだけのことなんです。誰もが大小何かしらの困りごとは持っているはずですし、それを『知っている』だけで、世界はもっと優しくなれる気がします」

最後にお二人にとっての幸せとはについて伺いました。
「僕は、妻が幸せでいてくれることが一番ですね。万が一、僕が先にいなくなっても、彼女が安心して幸せに暮らしていける世の中をつくっていくこと。それが、今の僕にとっての大事な指針になっています」
志歩さんも続けます。
「何より、平和に毎日を過ごせることです。どんな身体になっても、みんなと同じスタートラインから今日を始められる。そんな世の中になっていくことが、私にとっての幸せです」
kittoiの割烹着は、ただの衣類ではありません。それは、社会の境界線を少しずつなくし、誰もが同じスタートラインから毎日を始められるように、という願いがカタチになったもの。kittoiが描く「きっとよくなる」未来は、私たちのすぐそばまで来ているのかもしれません。


