しあわせのカタチ

波のまにまに、地域おこし

波のまにまに、地域おこし
03|わたしの「た」には「こ」が入っている

福島県・いわき市で暮らす野村史絵波さん。東京、奈良での暮らしを経て地元でもあるこの地に戻ってきたのは、2023年のことです。海からほど近い古民家で夫、そして1歳の子どもと暮らしながら、地域おこし協力隊として故郷と未来を繋ぐお仕事をしています。

連載「波のまにまに、地域おこし」では、そんな史絵波さんが好奇心を源に海、街、人を紡いでいく様子をお届けします(たまに日常の便りも)。第3回目は、「た」について。 

なにを言っているんだという顔でこの文章を読んでいると思いますが、ぜひ、「た」をよく見てください。いましたか、「こ」が。見つかりましたか。なんならこの「た」の一文字で「たこ」と読めてしまいませんか。

じゃあ、ひらがなでゆっくり「たこ」と書いてみてください。わたしはどうしても、「た」の一文字を書いただけで、「たこ」の二文字を書いた満足感を得てしまうのです。まだ「こ」が書けていないのに。

わたしはこんな感じの一人遊びをよくしています。変なのかもしれません。ただ、それもわたしです。なにかというと、観察して分解してものごとを理解するのが好きなのです。この「た」に「こ」が入っていることに気づいたのは、実は最近のこと。

デザインの仕事をしたり書類をつくったりするのに、パソコンのフォントをぼーっと見ていたある日。わたしは「た」のなかに「こ」が入っていることに気づいてしまいました。なんで今まで気づかなかったんだろう!

今世紀最大の発見をしたかのような衝撃でした。でも、それもそのはずです。フォントによって文字のプロポーションは違います。

手書きで文字を書いていた頃を思い出してみましたが、楷書の「た」に入っている「こ」は、ちょっと角度がつきすぎていて「こ」っぽくないのです。自分で納得しながら、そうか、わたしはしばらく手書きで文字を書いてなかったのだと気づきました。

先月あたり、たまたまつけていたテレビの情報番組から「現代人は漢字が書けなくなっている」という内容が耳に入ってきました。なんだか気になって見ていたら、スマホの普及によって手書きで文字を書くことをしなくなったから、脳が文字を覚えようとしなくなっているとのこと。

あーなんか、わかる気がする。最近スマホを放り投げてはすぐなくすくらいデジタルデトックスが進んでいるわたしでさえ、全然文字を書けなくなっている気がする。

なんだか、手書きもちゃんとしていこうかなと思えた時間でした。

しかしながら、「た」のなかにいる「こ」は、パソコンの打ち文字でしか見つけられないのです。この感動は、こうやってパソコンに向かってフォントの妙に魅せられている特権な気もして、このおもしろさを手放しがたい気もしてきました。

いろいろ言いましたが、どっちがいいとかではなく、バランスって大事だよねということで着地しようと思います。

それと、ぼーっと観察してみて新たな気づきを得ることって、結構大事かもしれないなぁ。

野村史絵波

野村史絵波

1994年生まれ。福島県いわき市出身。女子美術大学卒業後、300年の歴史を持つ奈良の老舗生活雑貨店へ入社。仕事を通じてまちづくり、故郷への関心が深まり、2023年に地元へUターン。現在は夫と子どもと3人で暮らしながら、地域おこし協力隊として活動中。地元漁師が使ってきた漁具の調査・記録をしながら、資料館をつくることを目指している。

Instagram: tn_tkrn

文・写真・絵/野村史絵波
記事制作/株式会社ZEN PLACE

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