しあわせのカタチ

波のまにまに、地域おこし

波のまにまに、地域おこし
04|我が家を心底、愛したい

福島県・いわき市で暮らす野村史絵波さん。東京、奈良での暮らしを経て地元でもあるこの地に戻ってきたのは、2023年のことです。海からほど近い古民家で夫、そして1歳の子どもと暮らしながら、地域おこし協力隊として故郷と未来を繋ぐお仕事をしています。

連載「波のまにまに、地域おこし」では、そんな史絵波さんが好奇心を源に海、街、人を紡いでいく様子をお届けします(たまに日常の便りも)。第4回目は、子どもとお家にまつわる、ちょっとしたお悩み相談。 

わたしには1歳3ヶ月の子どもがいます。歩くことにも慣れてきて、まわりのものへの興味もぐんと増してきた様子。家の中を歩き回っては、見つけたものを文字通り「手当たり次第」棚から出し、ある程度観察し終えるとポイっと投げ捨てて、また違うものに手を伸ばす。

保育園に行っている間にかたづけたはずの部屋は、またあっという間に散らかってしまいます。我が子こと妖怪散らし童(ちらしわらし)によって、わたしの心は完全に折れてしまった今日この頃。

そういえば、この家に住み始めて1年半くらいたった頃。妊娠をして子育てするにあたって家中の大掃除を始めたら、それがものすごく大変だということがわかりました。立派な欄間もよく見たらほこりの巣。

家中の扉という扉が襖のため、すべての敷居の溝には砂。子どもがハイハイし出すことを想像してゾッとしては、お腹を庇いながら掃除をする毎日。なるほど、それで最近の住宅はシンプルで無駄がなく、使い勝手とか手入れのしやすさが求められるのか。

そもそも我が家は元々ノイズが多い。ノイズというのは、なんというか、情報量が多いという感じで、例えば欄間の意匠とか、襖の枠とか柱とか、木材と土壁の色や質感の違いとかが全面的に主張してくる。

都会にいた頃に住んでいたコンクリート打ちっぱなしのマンションの、均一で無駄のない感じとはまるで別物。

味わいがありすぎるというか、視覚的にうるさい感じ。遊びに来る友人たちには「おばあちゃん家」と呼ばれています。

そういうぎゅっとした感じも含めて、おばあちゃん家ってなぜかやたら落ち着くのでそう呼ばれることにも満足していたんですが、子育てが始まったらそうとも言えなくなってしまいました。

古い民家のこの小さな段差や溝が、どれだけ素敵な意匠であっても、子どものことを考えるとどうしてもプラス一手間がかかるものに見えてしまうのをなんとかしたくて困っています。

床間は季節を感じるしつらいを楽しめる空間だし、多少の隙間風の寒さだって、「冬って寒いよね」って四季のある風土ならではの当たり前をちゃんと感じる一瞬かもしれない。

それを子どもや家族と分かち合っていくのはきっと豊かなことだと思うんです。おそらく今後作られることのない仕様のこの古い家が愛しくて好んで住んでいるのに、どうしてお前はそんなにほこりを溜め込むのか…。

このプラス一手間を前向きに捉えられないものでしょうか。わたしが欲張りなんでしょうか。もはやなにも気にしなかったらいいんでしょうか。そうしているうちに今日も元気に散らし童が帰ってきました。

野村史絵波

野村史絵波

1994年生まれ。福島県いわき市出身。女子美術大学卒業後、300年の歴史を持つ奈良の老舗生活雑貨店へ入社。仕事を通じてまちづくり、故郷への関心が深まり、2023年に地元へUターン。現在は夫と子どもと3人で暮らしながら、地域おこし協力隊として活動中。地元漁師が使ってきた漁具の調査・記録をしながら、資料館をつくることを目指している。

Instagram: tn_tkrn

文・写真・絵/野村史絵波
記事制作/株式会社ZEN PLACE

トップへ戻るトップへ戻る