しあわせのカタチ

波のまにまに、地域おこし

波のまにまに、地域おこし
05|野良の◯◯

福島県・いわき市で暮らす野村史絵波さん。東京、奈良での暮らしを経て地元でもあるこの地に戻ってきたのは、2023年のことです。海からほど近い古民家で夫、そして1歳の子どもと暮らしながら、地域おこし協力隊として故郷と未来を繋ぐお仕事をしています。

連載「波のまにまに、地域おこし」では、そんな史絵波さんが好奇心を源に海、街、人を紡いでいく様子をお届けします(たまに日常の便りも)。第5回目は、肩書きという"囲い"に捉われず、「野良」としてものごとと向き合う心地良さについて。

 最近のわたしは、「野良の〇〇」という自己紹介にハマっています。例えば、野良の学芸員。野良の民俗学者。野良のデザイナー、云々。資格はないけれど、そこそこに勉強して経験を重ねているものごとに関して、気負いすることなく軽やかに自己紹介をすることができるようになりました。

 最近、仕事で関わっている漁具(漁業の道具)のアーカイブ活動の一環で、小規模ながら、ふたつの企画展を開催しました。一つは、大漁旗。漁船が出航する際に高々と掲げられ、その瞬間を盛大に祝う縁起物の旗について紹介したもの。

もう一つは、かまぼこ製造の中で使われる型やせいろなどの道具と、それらを使ってきたかまぼこ職人を特集したもの。

展示する漁具は一通り調査をし、「誰が」「いつ頃」「どんな風に使っていたか」などの情報を台帳に記録します。この調査のために、使っていた人が存命の場合、直接話を聞きに行くこともあります。

当時の記憶を頑張って思い出しながら、なんだか嬉しそうに語ってくれる人々の話に、いつの間にかこちらまで引き込まれてしまっている。

話を聞いて見えてくる当時の実状や社会を現在と比べながら、展示にしたときのおもしろさがあるか、伝えたいメッセージがあるか、みたいなことを考えながら企画を練っていきます。

企画が固まったら、文章を執筆して、展示パネルをデザインして、展示の空間も設計して、実際にホームセンターで木材を買ってきて壁面を組み立て、漁具をレイアウトして設営する。

最初は単純に漁具を知ってもらおうと始まった展示だけど、一連の作業やら開催できた時の達成感やら、なんか結構楽しくて。

もともとデザインを学んでいたこともあり、スキルが活かせることも影響しているかもしれません。どうやらわたしは展示がつくれるようになったらしいのです。

これはもう学芸員を名乗ってもいいのでは! …でもきちんと資格を取って学芸員をやっている人への敬意もあるから、うーん。と、思った時に便利なのが「野良の」という枕詞でした。なによりも、勝手に調べて、勝手におもしろがって、勝手に伝えるという、この「勝手」というのが気楽で最高に気持ち良い。

漁具に対する偏愛を、経験やスキルを全力で使い、ただただ盛大に愛でる(ことに人を巻き込む)というのが、たまらない気持ちになります。

 もともと、肩書きというものへ謎の憧れがあり、ずっと何者かになりたかったわたし。今では、肩書きというものに、なんだか囲いのような、それ以上にも以下にもなれないような息苦しさを感じるようになりました。

なりたい自分でいるために、今の自分を認めてくれる「野良」というあり方が、心地が良くて気に入っています。

野村史絵波

野村史絵波

1994年生まれ。福島県いわき市出身。女子美術大学卒業後、300年の歴史を持つ奈良の老舗生活雑貨店へ入社。仕事を通じてまちづくり、故郷への関心が深まり、2023年に地元へUターン。現在は夫と子どもと3人で暮らしながら、地域おこし協力隊として活動中。地元漁師が使ってきた漁具の調査・記録をしながら、資料館をつくることを目指している。

Instagram: tn_tkrn

文・写真・絵/野村史絵波
記事制作/株式会社ZEN PLACE

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