08|豪雪地・新庄市を訪ねて
波のまにまに、地域おこし
波のまにまに、地域おこし
07|ひっそりつくるZINE

福島県・いわき市で暮らす野村史絵波さん。東京、奈良での暮らしを経て地元でもあるこの地に戻ってきたのは、2023年のことです。海からほど近い古民家で夫、そして1歳の子どもと暮らしながら、地域おこし協力隊として故郷と未来を繋ぐお仕事をしています。
連載「波のまにまに、地域おこし」では、そんな史絵波さんが好奇心を源に海、街、人を紡いでいく様子をお届けします(たまに日常の便りも)。第7回目は、大人になってからの自分を表現する心地良い居場所づくりについて。

月に一度、市内に住む同世代が何人かで集まってZINE(ジン)をつくるサークル活動を一昨年からやっています。ZINEは自由なテーマでつくる自主制作の小冊子のことです。
趣味とかなんとなく最近考えていることとか、本当に自分の好きなテーマを設定して一冊の冊子に落とし込んでみる。フォントの選び方だったり、編集や製本の参考例とか、いろんな既存のZINEを見ながらイメージを膨らませます。
平日の仕事終わりにメンバーの誰かの家にご飯を持ち寄ってわいわい食べながら行う「ひっそりZINE会」。その時間のほとんどは、ご飯が美味しいねっていう話と、近況報告と、たわいもない話。ZINEの話をするのはほんの1時間くらい。なんともゆるい会です。

このサークルが始まったのは、近所のシェアハウスに住む20代の友人が持ったとある違和感。高齢化・過疎化の進むこの地域では、若者にいろんな期待が寄せられます。
ただ、ほんの興味や趣味でやってみた些細なことも、SNSで「若者が地域のためにこんなことをしてくれた!」と紹介されたり、「えらいね、もっと地域のために頑張ってほしい!」みたいな声が聞こえてきたり。
本人の気持ちとは裏腹に、なぜか「地域のため」と回収されてしまう。友人が抱えている、モヤモヤにひどく共感しました。もう一つ個人的に感じていた違和感は、地域に若者の力が必要だと言われつつも、勝手なことはしないでほしいという無言の圧力を感じてしまうこと。
若いからなのか、少数だからなのか、はたまたそのエネルギーに当てられた恐怖心からなのか、若者が声を発する機会というのが少なく、そもそも挙手しづらい空気に包まれている気がします。

そうして見つけた「ひっそり」というキーワード。「好きにさせてほしいから、ひっそりとやるね」という反抗的で野心に満ちた譲歩が、ZINEをつくるエネルギーになっています。
この気持ちを共有している同世代の仲間たちと、同じご飯をたべながら過ごす時間は本当に心の支えになっています。大人になって、自分で自分のことを表現してみる機会はほとんどありません。それだけ、仕事に、家事に、忙しくしてしまっているなと気付かされます。
このサークルがあるおかげで自分を見つめる時間をつくれること、最後に冊子という「形」になることでなんとも言えない達成感と、一皮むけた気持ちにもなります。行程の中で、今まで気づかなかった自分の好みや癖を発見することができたりもします。
こんなふうにゆるく毎年続けてみて、作りためたZINEを読んだとき、私はどんな私になっているのか、ちょっと楽しみです。

