10|アナログネイティブ
波のまにまに、地域おこし
波のまにまに、地域おこし
09|春

福島県・いわき市で暮らす野村史絵波さん。東京、奈良での暮らしを経て地元でもあるこの地に戻ってきたのは、2023年のことです。海からほど近い古民家で夫、そして1歳の子どもと暮らしながら、地域おこし協力隊として故郷と未来を繋ぐお仕事をしています。
連載「波のまにまに、地域おこし」では、そんな史絵波さんが好奇心を源に海、街、人を紡いでいく様子をお届けします(たまに日常の便りも)。第9回目は、ある日見た夢から考えた、いつかくるであろう親離れ、子離れについて。

もう4月だ、春だ、年度の変わり目にぐっと意気込んで眠りについた夜、娘の夢を見ました。どこかの都会で、人のまばらな電車に乗り込み発車を待っていたわたし。ひとつ奥の扉から、あまりにも小さな乗客が乗り込んできます。それがなんと自分の娘でした。
周りの大人の四分の一くらいの身長で、リュックサックの肩ベルトを両手でしっかり持ちながら、てくてく電車内を闊歩している。冒険をしているような好奇心に満ちた目で、不安と楽しさが混じったような表情でした。
胸が締めけられるような苦しさで私はハッと飛び起きました。思わず、隣で眠っているはずの娘の姿がそこにあるかを確認してしまいました。よかった、よく寝てる。それから、なんだか涙がとまらなくなりました。こんなに毎日激しく私の後をついてくる娘が、こんなに毎日だっこをせがんでくる娘が、夢の中で自立している。

まだ一歳半なのに、もうどこかに行ってしまうんですか。ひとりでもだいじょうぶになってしまったんですか。あ、もしかして、ははをさがしにきてくれたんですか。だとしても、ひとりでそんなことができるようになってしまったんですか。こわくないですか。おなかすいてないですか。りゅっくさっくのなかのおむつはたりてますか。
この複雑な感情はなんなのかを夫と話しながら整理してみたら、今までの経験にはない新しい「寂しさ」でした。親になることで得た、子どもの成長を見守るための責任と自由。今は、娘に関することすべてを親である自分が決めるけれど、娘に意思が芽生えて、それを言葉で伝えられるようになると、娘が自分で決められることが増えていく。きっとそれが成長するということなんだと思いました。
それは、同時に少しずつ親の元を離れていくことでもあって、親もまた、時間をかけてゆっくり離れる準備をしていくのだなと。はぁ、あの風景が夢でよかった。母親2年目の私には、まだ離れる覚悟はできてないです。

こんな夢を見たのは、4月になって、娘にとって新しい季節が来たことを実感しているからだと思います。生後半年から保育園に通っている娘は、この4月で進級しました。新たなクラスは人数も増えるし、教室も先生も変わる。保育園は少しずつ新しい環境に慣らす期間に入っていて、娘もなにかを察しているような様子。
今までの1年間で積み上げてきたものに変化が起きるということが、人生1年生にとってどれだけの負荷になっているのか、想像することしかできないもどかしい時期。
だけど、子育てに関するすべての経験が新しいのは母親である自分も同じ。娘もわたしも、それから夫も、各々がそのとき目の前の気持ちを大事にしながら、たまに話して分かち合ってみたりして、乗り越えていけたらいいなと思います。


