左:株式会社ラッシュジャパン 取締役 ブランド担当役員 小林弥生さん
右:株式会社ラッシュジャパン 広報 小山大作さん
自分を見つめる時間を設けることが、相手との相互理解を深める
「なぜ会議前にピラティスをやることになったのか。簡単にいえば、私自身がピラティスをやっていて、その良さに触れたからということになりますね」
1年ほど前から個人的にピラティスを続けてきたという小林さん。当初は体調を整える目的で始めたものだったが、続けていくうちにピラティスが単なるエクササイズではなく、仕事のパフォーマンス向上にも寄与するものだと気づいたという。
「1時間にわたって自分の呼吸に集中し、背骨の動きに意識を向けることで、凝り固まっていた頭がほぐれてリフレッシュすることができた。もともと感情を原動力にして仕事に向かうタイプだったのですが、ピラティスを始めてからは、自分が今どんな状態にあり、どんなことを考えているかといったことが俯瞰で捉えられるようにもなりました」
もちろんこうした効果を整理して表現できるようになったのは、ずいぶん後になってから。だが、そうした「気持ち良さ」は当初から感じていたものだった。会議のアイスブレイクにピラティスを行うことで、人によって程度の差こそあれ、何らかのポジティブな効果が得られるのではないかという期待がまずあった。
さらに、こうして自分を俯瞰して見つめ直すことは、自分とは異なる意見を持つ人を認め、お互いに理解を深めることにもつながるという実感があった。
今回の会議に出席したのは、小林さんの所属するブランド・コミュニケーションチームと、経理などを業務とするファイナンスチームの計80人。仕事の性質上、感覚的で柔軟な発想を得意とする前者と、厳密に数字を扱う後者とは、お互いにコミュニケーションが容易でないと日頃から感じていたという。
前年1年間の会社の取り組みを振り返り、9月から始まる新しい1年の方向性を全員が共有する重要な会議を、部署の違いや役職、年次に関係なく、フラットに意見を交わせる場にしたい。その幕開けにピラティスを持ってきたのには、立場の違う出席者同士がお互いに心を開く、まさにアイスブレイクとしての狙いがあった。
頭に酸素を送ることで意識ハッキリ。集中力がアップ
結果として会議では非常に活発に意見が交わされ、雰囲気も終日和やかなものになったという。もちろん、そこにピラティスがどれだけ寄与したのかを直接的に測ることはできないが、会議の後に出席者からポジティブな感想が相次いだことは、そのことを間接的に示していると言えるのではないだろうか。
小林さんによれば、出席者から寄せられた感想には以下のようなものがあった。
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ピラティスを体験して感じたこと
・普段デスクワークで凝り固まった体がほぐされた。閉じていた胸を開くことで気持ち的にもオープンになり、相手の意見に耳を傾けることができた。
・足がしっかりと地面をとらえる感覚が得られた。文字通り「地に足がついた」状態だったからこそ、自分の考えをうまく相手に伝えることができたのではないか。
・頭にたっぷりと酸素を送ったことで、意識がとてもハッキリした。1時間のセッションはわりとハードで、疲れてしまうのではないかと心配したが、むしろ集中してミーティングに臨むことができた。
・ハードなセッションをともにやりきったことで、不思議な連帯感のようなものが生まれた。終日、いい雰囲気で意見を交わすことができた。
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80人の出席者のほとんどはピラティス未経験者。ピラティスとは何かさえ知らない人も少なくなく、事前に告知していたにもかかわらず、ジーンズで参加した人さえいたほどだったという。
だが、そうした中からも後日、個人的にピラティスの体験レッスンに申し込んだ人が何人も出たというから、いかにポジティブに受け止められたかが分かるだろう。会社としてもこうした反応を受けて、継続的な開催を検討しているようだ。
お堅い業界、エクササイズと無縁の人にこそ有効だ
LUSHは英国に本社を持つ企業で、日本法人にもフラットで自由なカルチャーがある。また業種の性質上、女性社員の比率が圧倒的に大きい。一見すると、こうした条件が揃っているからこそピラティスがポジティブに受け止められたようにも映る。だが、「実際は逆」だと小林さんは言う。
「女性社員から良い反応があるのはある程度予想していたことでしたが、実際にもっともハマっていたのは、50代の男性経理スタッフでした。ピラティスを自分とは無縁の世界だと思っていたり、普段体を動かす習慣のない人ほど、実際にやってみた時の効果や衝撃は大きいのではないでしょうか」
だからこそ、自由に働く先進的な会社よりも、伝統的でお堅いイメージの会社こそ、思い切ってピラティスを取り入れてみることで、非常に大きな成果が得られるのではないか、と小林さんは提案する。
そしてもう一つ、初めてピラティスをやる人がポジティブな効果を実感できるかどうかは、それぞれに合った形、合ったペースで始められるかにもかかっている。
ピラティスをエクササイズのように捉えてしまうと、形だけを真似てしまって、もっとも大切な呼吸がおろそかになってしまう。それではピラティス本来の気持ち良さを体感することはできない。
今回、レッスン前のブリーフィングで強調したのは、「自分の呼吸にフォーカスして欲しい」という1点だけ。ハードルを極力低く設定したことはポイントだった。
普段のスタジオでのレッスンもそうだが、参加者の間には当然習熟度に差があるし、オフィスに初心者を集めてやるというのであれば、モチベーションという意味でもバラバラだ。今回のラッシュジャパンの取り組みは、「それでも構わない」というところからスタートしたことが、成功の大きな要因になったと言えるだろう。
text by Atsuo Suzuki
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