マインドフルネスとは、「今この瞬間」に集中している心の状態を指す言葉です。そのような心の状態に達すると人は、本来持っている能力を発揮しやすく、また精神を安定させやすいといわれています。
そこでこの記事では、マインドフルネスの状態へと心を持っていける簡単なやり方や効果についてまとめました。
「仕事や家事のパフォーマンスをアップさせたい」や「ストレスから解放されたい」、「メンタルを安定させたい」と考えている方は、ぜひ読んでみてください。
目次
マインドフルネスの意味と注目される理由
マインドフルネスとは、瞑想(めいそう)の方法そのものとして勘違いされることが多いですが、実際には異なります。
ここでは、マインドフルネスの正しい意味をその歴史とともに押さえていきましょう。
昨今、マインドフルネスがよく話題になる理由についても紹介します。
マインドフルネスの意味と歴史
マインドフルネスとは、「今この瞬間をそのまま受け入れている」という自然な心の状態を指します。その考え方の基になっているのは、仏教における修行方法のひとつ「瞑想」です。
1979年、ジョン・カバット・ジン博士が「MBSR(マインドフルネスストレス低減法)」を提唱したのがきっかけとなり、マインドフルネスの考え方が周知されるようになりました。その結果、現代では、宗教的概念はなく、生活の質向上を目指すものとして認知されています。
このような歴史的観点やマインドフルネスに至るための方法として瞑想が使われることから、「マインドフルネス=瞑想方法の一種」と勘違いされるケースも多いのでしょう。
今マインドフルネスが注目されている理由
マインドフルネスは、創造性・集中力・生産性の向上やストレス低減を目的として、日本や世界を代表する大手企業を筆頭に続々と導入が進められるなど、注目されています。これほどまでにマインドフルネスが注目される理由は、その効果に科学的な裏付けが多いためでしょう。
ただし、「マインドフルネスになろう」と思ってすぐに到達できるものではありません。この記事を読んで、自分に合ったやり方やコツを見つけること、また続けることが大切です。
マインドフルネスの効果
マインドフルネス、つまり「今だけに集中する心の状態」を意識的に作り出すことは、心のトレーニングです。
トレーニングを重ねれば、心のコントロール能力が高まり、精神的に安定しやすくなるでしょう。すると、ここで紹介するようなさまざまな効果を得られるといわれています。
身体が深いリラックス状態に
マインドフルネスの状態に入ると、身体が深くリラックスします。マインドフルネスのための瞑想では、今このときにだけ意識を向けるため、呼吸や身体の感覚に集中するのが一般的です。そうすることで過去に傷ついたことや未来への不安などといった心の感覚と、今の感覚をしっかりと区別します。
身体の感覚は心に引きずられやすいため、身体の感覚にだけ集中すると、余計な力が抜けた自然な状態へと持っていきやすいといわれてます。
ストレス軽減につながる
ジョン博士の「MBSR(マインドフルネスストレス低減法)」ではプログラムの名前にもなっているように、
マインドフルネスのための瞑想は、心を落ち着かせることで、ストレスの低減、不安や落ち込みを緩和させる効果が期待できます。ストレス軽減につながるという研究結果も多数(Science Directの発表によると2017年時点で45件)あります。
ストレスが多い方やストレスを感じやすい方は、マインドフルネスになるための瞑想を生活の中に取り入れてみるとよいでしょう。
能力の向上が見込める
マインドフルネスのための瞑想を日常に取り入れると、集中力や記憶力をはじめとした能力が向上するといわれています。瞑想を続けることは、雑念を振り払い、今しなくてはいけないことに意識を向けるトレーニングにつながるためです。
能力の向上効果についても多くの研究結果が出ていますが、ある研究によると「瞑想を継続して行っている人は、そうでない人よりも内側前頭前野と後帯状皮質の活動量が低下していた」といいます。(※内側前頭前野と後帯状皮質は脳の一部分であり、目の前のことに集中できていないときほど活動するといわれている)
アンガーマネジメント力が身に着く
マインドフルネスのための瞑想の継続は、怒りの感情をコントロールする「アンガーマネジメント力」を育てるのにも役立つといわれています。マインドフルネスに至るには身体と心の感覚をしっかりと区別する必要があり、これを続けることは「怒りの感情を冷静に見極める能力の向上」にもつながるためです。
研究結果としても、「マインドフルネスに至りやすい人ほどアンガーマネジメント力が高い」ことが発表されています。
マインドフルネスは年齢性別を問わず誰でもできる
「今この瞬間だけに集中するために瞑想をする」と聞くと、「なんだか難しそう……」と感じられるかもしれません。しかし、瞑想方法はさまざまあることもあり、性別も年齢も関係なくマインドフルネスに至れるといいます。
実際、海外では幼稚園から瞑想タイムの導入事例があり、近年は日本でも小学校で実証実験が行われました。このようにマインドフルネスのための瞑想は人を選びませんが、ここではその中でも、日常に瞑想を取り入れてほしい人の特徴を紹介します。
マインドフルネスがおすすめな人
子どもから大人までおすすめできるマインドフルネスのための瞑想ですが、特におすすめなのは以下に当てはまる方です。
- 中年期以降の人(40歳以上)
- ストレスが多い人
- 多忙な人
- 仕事の成果を上げたい人
- 心のコントロール能力を鍛えたい人
生活にマインドフルネスに至る習慣を付けられれば、さまざまな効果が期待できますが、中でも中年期以降の方は大きな効果を得やすいといわれています。人生経験を重ねることはよいことである反面、雑念も生みやすくなるためでしょう。
すでに40歳を迎えている方や迎えていない方も、生き生きと楽しい日々を送りたいのなら、マインドフルネスの習慣をおすすめします。
マインドフルネスをおすすめできない人
マインドフルネスのための瞑想は、うつ傾向が強い場合には「医師の指示を仰ぐ」のが無難だと、一般的にはいわれています。マインドフルネスの状態に入れず、逆にネガティブなことを考え続けて、うつ傾向を強めてしまう恐れがあるためです。
このような不安がある場合には、自己流で取り組むのではなく、MBSR(マインドフルネスストレス低減法)のプログラムを提供するクリニックを利用する方法もあります。いずれにせよ、まずは担当医に相談するのがおすすめです。
マインドフルネスのやり方|瞑想
マインドフルネスに至るための瞑想方法はさまざまありますが、ここではMBSR(マインドフルネスストレス低減法)のプログラムのひとつである「呼吸空間法」のやり方を解説します。
初めのうちは自宅をはじめリラックスしやすいスペースで行うのがおすすめです。慣れてくれば職場や出先など場所を選ばず、すぐにマインドフルネスの状態へと持っていけるようになるでしょう。
1.姿勢を正し、身体の力を抜く
まずは姿勢を正しましょう。体勢は横になっても、座ったままや立ったままでも構いません。姿勢を正すのと身体の力を抜くのとでは相反するように思えるかもしれませんが、悪い姿勢では身体の重心が安定しづらく、リラックスしづらくなってしまいます。
骨盤を真っすぐと立てた上で背筋を伸ばし、肩の力を抜いてみましょう。このとき目は自由ですが、軽く閉じるか、薄く開けて斜め下に視線を落とすぐらいのほうが、視覚情報が減り、瞑想に集中しやすいでしょう。
2.瞑想をする
呼吸空間法の瞑想は、3ステップで進みます。
- 1ステップ…今、心に浮かんでくることに注意を向ける
- 2ステップ…自分の呼吸に注意を向ける
- 3ステップ…呼吸とともに身体の感覚に注意を向ける
呼吸空間法という名前が付いていますが、いわゆる呼吸法のように呼吸の仕方を意識する必要はありません。呼吸をコントロールしようとするのではなく、自然な呼吸の中でおなかが膨らむ感覚や呼吸が肺に行きわたる感覚などに意識を向けましょう。
3.今この瞬間に意識を向け続ける
マインドフルネスに至るためには、今この瞬間に意識を向け続けることが大切です。コツとしては、感覚として受け取ったありのままを捉えるようにするとよいでしょう。
たとえば1ステップ目では、自分の内側にある感情に目を向けるので、ときには不快な感情が浮かぶこともあるかもしれません。しかし、その感情からあれやこれやと考え出してしまっては、今この瞬間ではなく過去や未来へと思考が及んでしまいます。
心にしろ身体にしろ、浮かんできた感覚には否定も肯定もせず、「私は今こんなふうに感じているんだ」とそのまま受け止めましょう。
マインドフルネスのやり方|動く瞑想「ピラティス」
「マインドフルネスになりたい、だけどじっとしていることが苦手……」という方には、動く瞑想といわれる「ピラティス」がおすすめです。
ピラティスは身体の正しい動かし方を重視したエクササイズであるため、骨や筋肉の動きひとつひとつに常に意識を集中させます。その結果、自然とマインドフルネスの状態に入りやすいのがポイントです。
またピラティスは、発案者が自分の病弱な身体を克服するために考案しました。なので、安全性が高く、誰でも気軽に取り組みやすいのも魅力です。
5分からOK!マインドフルネスを日常に取り入れよう
マインドフルネスのための瞑想は、たった数分間でも続けることで効果があるといわれています。毎日をより楽しくするための方法として、ぜひ日常に取り入れてみましょう。
ここでは朝、昼、夜の3パターンに分けて、瞑想を取り入れやすいタイミングを紹介します。自分の生活スタイルに合ったタイミングを見つけてみてください。
朝:活動を始める前に
朝に瞑想をするのなら、活動を始める前、起きてすぐの時間がおすすめです。朝早くであれば静かで瞑想に集中しやすいほか、これから始める仕事や家事へと気持ちをスムーズに切り替えやすくなります。
日ごろ、「なかなかやる気のスイッチが入らない」「ダラダラと朝を過ごしてしまいがち」といった方には朝の瞑想がぴったりでしょう。また、瞑想を始めたばかりのころはちょっとした音が気になってしまいやすいので、慣れるまでは静かな時間を選ぶのがおすすめです。
昼:休み時間を利用して
お昼の休憩時間に瞑想をすれば、ここまでの疲れをリセットしやすく、午後からの活動でも集中力やモチベーションを保ちやすくなるでしょう。瞑想に慣れてくれば、喧噪や人の目がある中でもマインドフルネスに至れるといいますが、初心者のうちは難しいかもしれません。
静かに瞑想できるような休憩スペースが見つけられないようであれば、飲み物や食事を使った瞑想方法を試してみるとよいでしょう。コーヒーやランチの香り、温度、味といったそのときどきの感覚にだけ集中することも瞑想方法のひとつです。
夜:リラックス時間に・就寝前に
夜に瞑想をすることは深いリラックスをもたらしてくれ、寝付きや睡眠の質がよくなるといわれます。考え事のリセットタイムとしても使えるので、「この後はもう何もすることがない、ゆっくりするだけ」といった時間に行うのがよいでしょう。
たとえば寝る直前、布団の中でも構いません。「考え事が止められず、なかなか寝付けない」と悩んでいる方にもおすすめです。
ピラティスで効果的なマインドフルネス体験を
マインドフルネスとは、「今この瞬間に集中し、そのまま受け入れている」という自然な心の状態を指します。日常に瞑想を取り入れれば、いつでもマインドフルネスの状態に入りやすくなり、心の安定や能力の向上効果が得られるでしょう。
しかし、効果を得るには、継続的な瞑想が必要です。続けられる自信がない方は、動く瞑想といわれるピラティスを日常に取り入れてみませんか。
約130店舗のスタジオを展開する「zen place」では、全国のスタジオでピラティスの体験レッスンを実施しています。心身の健康が満たされた「Well-being(ウェルビーイング)」な状態を目指したいのなら、ぜひお試しください。
参考:
『Mindfulness mediates the physiological markers of stress』
『課題変更によって生じたストレス反応への短時間のマインドフルネス瞑想の実験的効果』
『感情制御方略とマインドフルネスがアンガーマネジメントに及ぼす影響』