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1%のデキるリーダーはすでに実践している!Googleのマインドフルネス研修『SIY』がもたらす効果とは?

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近ごろ「マインドフルネス」という言葉をビジネスシーンで目にする機会が増えた。日本では古くから「瞑想」として知られるものだが、iPhoneの生みの親であるスティーブ・ジョブズが実践していたり、海外の先進企業が社員研修に取り入れたりしたことで、仕事のパフォーマンス向上という点で注目度が高まっている。

こうした動きに火をつけたのが、あのGoogleが開発したビジネスリーダー向けの研修プログラム『Search Inside Yourself(以下、SIY)』だ。『SIY』は2012年からGoogle社外にも公開され、一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート(MiLI)によって日本でも紹介されている。
そこで今回は、マインドフルネス研修とはどんなもので、それがなぜビジネスに有効なのかといった点について、MiLI代表理事の荻野淳也さんに話を聞いた。

 

『SIY』は、ビジネスリーダーがEQを向上させるためのプログラム

ーーGoogleで開発された研修プログラム『SIY』とはどういったものですか?
マインドフルネスに基づいた、ビジネスリーダーがエモーショナルインテリジェンス(心の知能指数)を向上させるための研修プログラムです。2007年にGoogleの社内向けプログラムとして開発されたのが始まりで、その後徐々にバージョンアップし、2012年に初めて社外に紹介されました。
マインドフルネスはもともと仏教の流れをくむもので、ティク・ナット・ハン師が仏教の「正念」という言葉を訳したのが起源とされます。
70〜80年代にはジョン・ガバット・ジン博士が鬱の予防など精神治療に応用して、かなりの成果をあげました。そこから科学的検証を経て、スポーツのメンタルトレーニングなどにも普及していきました。
ビジネスの世界で応用するきっかけになったのが、Googleの『SIY』です。同社107番目の社員でエンジニアのチャディー・メン・タン氏が開発しました。
メン・タン氏は、Googleの初期検索エンジンのアルゴリズムを開発した天才ですが、それだけ仕事ができても自分の幸せにつながらないということに問題を抱えていたそうです。こうした問題意識に端を発して、仏教やEQを学び、この研修プログラムを作るに至りました。
マインドフルネスをビジネスに応用する動きは、Googleに限った話ではありません。ハーバードやスタンフォードでも研究されていますし、IntelやP&Gといった企業も独自のプログラムで実践しています。最近の動きでいえば、世界経営会議のテーマにも、マインドフルネスが取り上げられました。

日本では今年に入ったくらいから、ようやく認知され始めた感じです。実践しているのはビジネスマン全体からすれば、まだ1%ほどといったところでしょうか。

 

ビジネスマンにとってもっとも重要な集中力を高めてくれる

ーー研修の中身はどんな構成なのでしょうか?
プログラムはまず、基本的なマインドフルワークから始まります。日本語で「集中瞑想」と言われるものです。これによって、すべてのビジネスマンにとってもっとも大切な能力である集中力・注意力が身につきます。
マイクロソフトの調査によれば、現代の人間の集中力はたったの8秒しか続かないのだそうです。これは金魚以下だといいますから、驚きですよね。
でも、言われてみれば確かに、思い当たる節がありますね。例えば、PCで何か資料を作ろうとしている時。ポップアップしてきたメールをたまたまクリックしたら、そこから別のメールを返信しないではいられなくなり、そうこうしているうちにニュースが飛び込んできて、そこからネットサーフィンが始まる……といったようなことは、誰もが経験しているのではないでしょうか。
どの企業も生産性向上のためにさまざまな取り組みをしていますが、そのほとんどが、集中力の欠如ゆえに全く機能していないというのが現実です。だから生産性を高めようと思ったら、一番最初にやるべきことは集中力を高めることなのです。

ーー集中力が高まることは、リーダーシップにどうつながっていくのでしょうか?
集中力が高まると、そこからEQを構成する5つの能力の向上につながります。5つとは、セルフアウェアネス=自己認識力、セルフマネジメント=自己統制力、モチベーション=動機付け、エンパシー=共感、ソーシャルスキル=他者とコラボレーションする力、を指します。
マインドフルメディテーションを続けていくと、だんだん心と頭がクリアになり、自分自身がどんな感情や思考、価値観を持っているかということに気づけるようになります。これが、自分自身への気づき=セルフアウェアネスです。
スタンフォード大学の研究でも、このセルフアウェアネスがリーダーにとってもっとも大切なスキルだと言われています。まず自分のことを知らないでは、他者へのリーダーシップなど発揮できるわけがないからです。
自分自身が分かってくると、今度はそれがコントロールできるようになる。これがセルフマネジメントです。そういう状態だからこそ、モチベーションもキープできるし、さらには、島皮質と呼ばれる共感を司る脳の機関も活性化することが分かっています。
その結果、仕事のパフォーマンス、リーダーシップ、ウェルビーイングの3つの効果を獲得できる。このような流れで、マインドフルネスはリーダーの能力を高めることができると言われています。

 

脳科学が裏付けるマインドフルネスの効果

ーー科学的にはどのような根拠が示されているのでしょうか?
脳科学の研究によれば、マインドフルメディテーションには4つのプロセスがあるとされています。
まず、呼吸に注意を向けることで、前頭前皮質と呼ばれる箇所が活性化する。これが集中している状態です。
しかし次第に注意はそれて、雑念がわく。と言っても、それ自体は無駄なことではありません。前頭前皮質以外にもさまざまな箇所が活性化しているデフォルトモードネットワークという状態は、想像力やクリエイティビティを掻き立てます。関係ないことをしている時に限っていいアイデアが思いつくというのは、この状態にあるからです。
マインドフルネスで肝心なのは、このように注意がそれたこと自体に気づくこと。これによって、今度は島皮質が活性化する。そこから雑念を手放すことで、再び呼吸に集中する状態に入ることができるのです。

さらに言うと、マインドフルネスが心身の健康につながるというのも、脳科学的なアプローチから説明することができます。
前頭前皮質や新皮質を通さずに衝動的に反応する、扁桃体という部所があります。狩猟時代の名残と言われる脳の古い部分で、もともとは突然現れる敵に対して身構えるためにあったものですが、外敵などほとんどいない現代にも、バージョンアップすることなくそのまま残っています。
これが刺激されると副腎が活性化し、ストレスホルモンが放出します。そしてストレスホルモンが出ると、免疫力は低下し、がん細胞も活性化する。現代を生きる私たちはさまざまなストレス因子に囲まれていますから、それらにいちいち反応してしまうことで、1日中ストレスに苛まれ、ひいてはストレスが原因で寿命を縮めることになるのです。
マインドフルネスにはこの扁桃体の活動を抑制する効果があることが分かっています。つまり、現代人をストレスから解放し、心身を健康にするのにも有効だということです。

 

「心と頭の筋トレ」のようなもの。継続しないと意味がない

ーーでも1回やっただけでは意味がないですよね?
おっしゃる通りです。だから私はマインドフルネスを「心と頭の筋トレ」だと説明するようにしているんです。
筋トレたるゆえんは3つあります。まず、理論だけ知っていても全く意味がないということ。でも、座って呼吸に意識を向けるだけなので、誰にでも習得可能だということ。そして、継続しないと身につかないものだということです。
『SIY』のプログラムでは、最後にパートナーを見つけ、定期的に続けていける仕組みにしています。

ーー他に実践する上でポイントはありますか?
とにかくその効果を自分で体感してもらう以外にはないですね。
私自身は『SIY』を扱う以前から、ヨガや瞑想が仕事のパフォーマンス向上に与える効果を確信し、それを多くの人に伝えようとさまざまなことに取り組んできました。でも、一部の例外を除けば、導入しようという企業はなかなか増えなかった。
そんな時に出会ったのが『SIY』だったんです。そこには当時の自分がなかなか言語化できていなかった「これがなぜビジネスリーダーにとって必要なのか」ということがすべて書いてあった。日本でこれをやるのは自分しかないと思ってサンフランシスコへ行って直接掛け合い、現在に至るというわけです。
だから今では脳科学という科学的なロジックがあり、一方ではジョコビッチやマイケル・ジョーダンといった、成功者の事例もある。でも、それだけでは人が継続的にマインドフルネスを実践するようになるまでには、まだ足りないんです。
結局、最後はその人自身が体験して効果を実感できるかどうか。そこで何も感じないようであれば、どんなにいいものと言われようが続けることはないでしょう。

 

子育てに、紛争解決に。すべての人にマインドフルネスを

ーービジネス以外の効果についてはどう考えていますか?

当然、これはビジネスに限った話ではありません。子供からおじいちゃんおばあちゃんまでやって欲しいし、やる必要のあるものだと思っています。僕自身の取り組みで言えば、子育て中のパパママに強く勧めています。
仕事に忙しい中、子供が言うことを聞かないと、どうしてもイライラしてしまうという親は多いですよね。僕自身も、忙しい朝はどうしてもそうなってしまいます。
ワーキングママの多くは、お昼をすぎたころにはもう、保育園の迎えが頭をよぎって、仕事に集中できなくなると言います。逆に家に帰った後は、今度は仕事に集中できなかった日中のことを思い返して、自己嫌悪に陥ったり将来のキャリアに不安を感じたりする。つまり、常に今ここに集中していない状態が続いているんです。
考えても考えなくても変わらないことに、パパもママも苦しめられている。セルフマネジメントできるかどうかは、切実な問題になっていると言えるでしょう。こうした現状を見るにつけ、子育て中のパパママにこそマインドフルネスは必要なのではないかと思えてくるんです。
そうやって本当にみんながマインドフルな状態になったら、いい世の中になる気がします。ワールドピースは僕たちMiLIが掲げる究極的なミッションでもあります。
世界平和というとちょっと怪しく聞こえるかもしれません。でも、宗教戦争にしろ、日本における原発問題にしろ、多くの争いは二元論から脱し切れていないところに問題がある。本当は白か黒かではないところに答えはあるかもしれないのに。
それに気づくことこそが、まさにセルフアウェアネスです。誰も抜け出せていない二元論から脱する解は、マインドフルネスにあると信じているんです。

text by Atsuo Suzuki

 

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